【元松阪市民病院 総合企画室 世古口 務】
本連載の最終回になりました。病院経営で苦戦されている公立病院の皆さまに経営改革で世界的に有名なジョン・P・コッターを紹介いたします。
ジョン・P・コッターは、1947年、米国に生まれ、数々のビジネス書を世に送り出したリーダーシップ論の世界的な権威です(日本の松下幸之助の研究者としても有名)。マサチューセッツ工科大学とハーバード大学を卒業した後、72年からハーバード・ビジネス・スクールで教鞭(きょうべん)をとり、多くの企業が変革に失敗している点に着目し、その理由を解明するとともに、いかにしてその成功率を高めるかということを研究してきました。彼は、その著書「企業変革力」、「ジョン・コッターの企業変革ノート」の中で、一般企業における大規模な変革を成功に導く過程として、次のような「8つの段階」を提唱しています。
第1段階:危機意識を高める
周囲の人々に変革の必要性と、すぐに実行することの重要性を理解させる。
第2段階 :変革推進チームをつくる
変革を推し進めるには強力なチームが不可欠であることを認識する。チームの構成は、それぞれリーダーシップ、信頼性、コミュニケーション、専門的知識、分析力、危機意識に優れたメンバーが望ましい。
第3段階:適切なビジョン、戦略を掲げる
将来がどのように変わるのか、その将来をどのように実現するのかを明確にする。
第4段階:ビジョンを周知徹底する
変革のビジョンと戦略について、なるべく多くの人の理解と賛同を得るようにする。
第5段階:自発的な行動を促す
障害はできるだけ取り除き、そのビジョンを実現したい人たちが行動しやすくする。
第6段階:短期的な成果を実現する
できるだけ早い時期に、目に見えるはっきりとした成果を上げる。
第7段階:気を緩めない
ひとつ成功を収めたら、そのあとは変革をさらに推し進め、加速させる。そのビジョンが実現するまでは変革に次ぐ変革で、決して手綱を緩めてはならない。
第8段階:変革を根付かせる
新たな行動様式が過去の古い因習に完全に置き換わるまでは、その新しいやり方を持続し、それが成果をあげていることを絶えず確認する。変革リーダーが交代しても、勝利をもたらす新たな行動を続ける。
この「8つの変革ステップ」は、決して一般企業に限ったことではなく、どのような組織においても、変革させる場合には通用する考え方であり、当然、病院においても例外ではないと思います。
■「ジョン・P・コッターの8つの変革ステップ」は医療現場で、なぜ検証されていないのか?
ではなぜ、これまで「ジョン・P・コッターの8つの変革ステップ」を医療現場で検証した例がないのでしょうか。私が調べた範囲では、これに該当するような病院経営改善の報告は見当たりませんでした。もし、ないとすれば次のような理由が考えられます。
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