【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
2024年度診療報酬改定に向けて医療経済実態調査の結果が開示された。例年同様、病院の抽出率は1/3であり、特定機能病院については全てが調査対象とされ、有効回答率はそれぞれ47.9%と97.7%だった。なお、前回調査時の有効回答率は病院が52.8%で特定機能病院は95.4%であり、病院については下回る結果となった。
表は病院機能別の財務状況であり、損益差額が特別な補助金などを含まない医業収支に近い数値であり、20年度以降、悪化傾向にあることが分かる。特に特定機能病院はマイナス10%に迫る状況で、DPC対象病院もそれに次ぐ状況にある。今まで一貫して黒字基調にあった療養病棟入院基本料1(以下、療養病棟)でさえもついにマイナスに転じ、病院の財務状況は悪化の一途をたどっている。ただし、新型コロナウイルス感染症の空床確保の補助金を含めるとDPC対象病院と療養病棟ではプラスに転じる=グラフ1=。
100床当たり医業収益について療養病棟は微増であるのに対して、特定機能病院はその3.5倍収益は多く、さらにこの10年で1.3倍増加している。一方で医薬品費の伸びが著しく、それが収益増につながったことになる。グラフ2は特定機能病院について13年度を起点とした伸び率を見たものである。医業収益は増加しているが、材料費の伸び率はそれを上回り、さらに医薬品費の増大は著しい。増収減益というトレンドにあり、今後もこの傾向が続くことが予想される。
20年度に医業収益が減少したのはコロナ禍で特に4月・5月に予定手術を制限した影響が大きく、それに伴い診療材料費も減少している。一方で、
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次回配信は12月25日を予定しています
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