【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
■B項目をどう考えるか
2024年度診療報酬改定で一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)のB項目を急性期全般から廃止すべきであるという議論があり、非常に注目される論点である。看護必要度は、当初A項目とB項目で構成されていたところに、16年度改定でC項目が登場し、現在はC項目の評価が非常に手厚くなっている。看護必要度というよりも、重症度であり、医療必要度という性格を強く帯びている。そのことについて、看護部では残念だという意見もあるだろう。なお、本連載第95回で私は、「⼈⼿不⾜の時代、看護必要度B項⽬を廃⽌しては」という提言をしており、19年当時では突飛な見解だと捉えられた方も多いと思う。ただ、現実はその方向に近づいてきたことになる。
私がB項目を廃止した方がよいと主張した理由は、B項目は急性期らしい評価ではないことが一番の理由である。資料1は日本慢性期医療協会のデータであるが、B14の「診療・療養上の指示が通じない」などは20対1の療養病棟の方が、7対1の急性期病棟よりも圧倒的に高くなっている。
さらに、資料2はA項目であり「心電図モニターの管理」は7対1の急性期病院で実施率が高く、これは、当時、B14・15に該当し、A項目1点以上かつB項目3点以上という基準があったが、心電図モニターの管理がA項目1点に該当することから、看護必要度を上げるために心電図モニターを付けている施設も存在するからだ。
また、人手不足の時代であり看護補助者が集まらず、看護師が看護補助者の業務を行うなどの矛盾が急性期病院では状態化している。だとしたら、B項目の評価を無くせばより患者に寄り添うことができるなどの理由からであった。
その後、22年度診療報酬改定では、ICUの評価票でB項目が削除された。これについては、早期離床リハビリテーション加算などの趣旨から、B項目の評価は矛盾するし、妥当だろう。なお、基準には盛り込まれていないが、測定は継続することとなった。
ただ、高齢患者が増加している今日、急性期一般入院料から単純にB項目を削除するだけでは、医療提供体制に支障を来す恐れもある。特に高齢者救急においてその影響が顕著に出てくるだろう。本稿では、看護必要度の最近の改定の経緯を振り返り、データを基にその実態に迫り、今後の在り方について私見を述べる。
■看護必要度の経緯と実態
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次回配信は11月27日を予定しています
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