【元松阪市民病院 総合企画室 世古口 務】
公立病院の赤字の原因の1つが、業務委託費にあることを前回説明しました。今回はその中でも病院経営に大きく関係する医事課業務の委託について説明いたします。公立病院の事務職員は、3-5年ごとにほぼ定期的な異動があり、これが他の公的病院、民間病院と比較して、非常に不利になっています。今回は、公立病院の医療事務の委託について、もう少し詳しく問題点を説明いたします。
医療関連サービス振興会の調査によれば、医療事務委託率は1991年度の23.1%より年々増加し、ピーク時の2003年度には41.9%に達していましたが、現在は30%後半が続いています=グラフ1=。 (残り3678字 / 全4826字) 次回配信は8月4日5:00を予定しています
医事課業務を委託にすれば病院にとって経営的に有利であるのであれば、年々、医療事務委託率が上がってくるはずですが、あまり大きな上昇が見られず、むしろ低くなったままの状況です。どこに問題があるのか考えてみましょう。
私が昨年3月まで勤務しておりました松阪市民病院も2010年3月まで、医事課業務は委託でした。その後、委託を廃止し直営化しましたので、その時の経験を含めて、公立病院における医事課業務委託の問題点について考えてみます。
問題点その1
院長はじめ、病院の上層部が病院の医事課業務の重要性を認識していません。すなわち医事課業務は、病院の他の部署を委託するのとは異なり、病院の医業収益を生む源であることを認識していません。つまりは、事務の一部門としてしか捉えておらず誰が担当しても同じことであると考えています。
問題点その2
医事課業務は専門的な知識と現場での経験が非常に重要になりますが、3-5年で本庁との間で異動がある公立病院では経験豊富となった職員でも定着させるのが極めて困難です。そのため公立病院で医事課業務を委託している病院が多いのが現状です。病院が契約した人数だけは、委託会社から派遣されてきますが、派遣されてくる人の医事課業務の経験がさまざまです。全然経験のない人まで派遣されてきて、病院で仕事しながら診療報酬制度やDPCを勉強し、慣れた頃には、会社が他の病院に異動させてしまうことがしばしばみられます。そのため、医事課業務を委託している病院では、病院での取り組み実績が病院の財産として残っていきません。
問題点その3
会社から派遣されてくる人は、会社の社員であり、病院に対する帰属意識が全然ありません。会社の上司の命令には従いますが病院長の方針には無視していることが多く、地域の人々のため、患者・家族のため、病院のために働くという意識が全然見られません。
問題点その4
会社から派遣されてくる人は、会社と病院との間の契約内容の仕事しかしません(会社から「契約業務以外の事は、してはいけない」という教育!)。
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