医師の時間外労働の上限規制が開始されるまで既に1年半を切る中、準備が遅れている病院は対応が急がれる。準備状況を把握するため、厚生労働省が医療機関を対象に行った調査からは、医師の労働時間の短縮を進める医療機関に立ちはだかるハードルとして、4つの課題が明らかになった。医療現場はそれらにどう対応するべきなのか、担当者に聞いた。【松村秀士】
医師の時間外・休日労働時間は2024年4月以降、副業や兼業を含め、原則として年960時間に罰則付きで規制される。ただ、救急医療など緊急性の高い業務に従事する医師らに配慮し、年1,860時間に期限付きで上限を緩和する「B水準」などの特例を設ける。
それらの適用を目指す医療機関は、医師労働時間短縮計画(時短計画)を作成し、医療機関勤務環境評価センターの評価を受けた上で、都道府県に指定を申請する必要がある。
時間外労働の上限を守るためには、勤務医の労働時間の把握が大前提だが、それ自体ができていない病院も少なくない。厚労省が6月に公表した「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」の結果によると、回答した約3,600病院のうち、副業・兼業先も含め医師の時間外・休日労働時間をおおむね把握していた病院の割合は、3-4月時点で約4割。大学病院の本院に至っては2割超にとどまっていた。
また、24年4月以降の時間外・休日労働時間が年960時間を超える医師がいる見込みと回答した約530病院のうち、宿日直許可を既に得ている病院の割合は約3割。一方で申請を予定しているがまだ申請していない病院は4割超、申請したが許可を得られなかった病院は1割未満などだった。
■勤怠管理システム導入費、3つの枠組みで支援
準備状況調査をはじめとした医療機関からこれまで寄せられた声を、厚労省に聞いてみると、▽勤務医の適正な勤怠管理▽宿日直許可の取得▽研さんと労働の線引き▽医師派遣の引き揚げ-という4つの課題に関する意見や要望などが多いという。
医療機関は、それらにどう対応すべきなのか。
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