【千葉⼤学医学部附属病院 副病院⻑、病院経営管理学研究センター⻑、ちば医経塾塾⻑ 井上貴裕】
外来化学療法が増加しており、急性期、特に高度急性期病院では医薬品費の比率が上昇している=グラフ1・2=。もちろんそれに伴い外来診療単価も上昇するわけだが、これらは財務状況が悪化する一因であると私は考えている。
もちろん、外来化学療法では、使用した薬剤については出来高で算定ができるし、検査などの実施した行為も取りっぱぐれがあるわけではない。とはいえ、消費税負担もあるし、2022年度診療報酬改定で評価された外来腫瘍化学療法診療料は、がん患者指導管理料(ハ)や在宅自己注射指導管理料なども含めて700点にとどまり、その中で人件費を賄うとすると、高度な化学療法を行う病院にとって収益性が優れるとは言い難いのが現実である。高齢者に対する化学療法が増加しており、今後もその傾向は続くことが予想される。もちろん、がん患者が急性期病院にとって重要であることは事実であるので、収益性だけで捉えるべきものではないことは言うまでもない=グラフ3=。
なお、40歳以上人口10万人当たりの外来化学療法加算の算定件数については最大と最小の都道府県で1.9倍の差がある。ただ、これは外来化学療法加算を算定した施設所在地を基にしたデータである=グラフ4=。そこでグラフ5では施設所在地ではなく、患者居住地でがんの推計患者を見たのだが、やはり都道府県によって差があり、最大と最小で入院では2.0倍、外来では1.7倍と、全体で1.5倍の差がある。ではなぜこのような地域差が生じるのであろうか。本連載で取り上げてきたPCIなどの領域では専門医数などとの相関が強く、医療提供体制が手術実施率に差をつけてきた可能性があることを示唆してきた(連載第70回)。
ただ、
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次回配信は9月20日5:00を予定しています
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