【千葉⼤学医学部附属病院 副病院⻑、病院経営管理学研究センター⻑、ちば医経塾塾⻑ 井上貴裕】
物価が高騰することの影響により病院の財務状況は悪化傾向にある。そんな中で、2022年10月から処遇改善で看護師等の給与引き上げのために新たな診療報酬である看護職員処遇改善評価料が評価されることになった。165通りに細分化され、1日当たり点数は1点から340点までに設定された。
この2月から9月までは21年度の補正予算により、補助金での対応とされ、対象となる医療機関について手上げをした場合には、看護師1人当たり月額4,000円の設定で給付が行われてきた。しかし、10月からは、1人当たり月額1万2,000円程度の賃金を上げることが22年度改定時に決まっており、0.2%分の財源が確保されている。
コロナ禍でも活躍した医療従事者に対して1人当たり月1万2,000円相当の報酬を増やすことは物価高騰という局面で賃金を引き上げる手段としては理解できるし、対象となる看護師などからすれば喜ばしいことだろう。ただ、事はそれほど単純でないことは各種報道がなされている通りである。
本稿では、諸外国との賃金水準の比較や医療従事者の給与などの支給水準をデータに基づき確認した上で、当該評価料が一筋縄ではいかない懸念材料について私見を交えて言及していく。
グラフ1は、
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次回配信は9月5日5:00を予定しています
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