【千葉⼤学医学部附属病院 副病院⻑、病院経営管理学研究センター⻑、ちば医経塾塾⻑ 井上貴裕】
地域医療支援病院は、1997年の第三次医療法改正において、地域で必要な医療を確保し、地域の医療機関の連携等を図る観点から、かかりつけ医等を支援する医療機関を選定する制度として創設されたものである。外来縮小を伴うため、当初は及び腰の医療機関が多かったが、2022年2月末現在661病院が都道府県により承認されている。
グラフ1
令和2年度 病床機能報告データを基に作成
グラフ1は都道府県別の地域医療支援病院数であり、地域差が著しい。さらに二次医療圏別の承認病院数トップ30がグラフ2であり、かなり充足する地域もある。一方で二次医療圏に1つ以上とし、紹介中心の中核病院を決めることを目的とする当該制度ではあるが、それを満たせない医療圏が多数あるのも現実である。
グラフ2
令和2年度 病床機能報告データを基に作成
その理由としては、紹介患者中心の医療提供を行い、以下の(1)~(3)のいずれかに該当すること等が承認のための要件とされていることが関係している。人口減少が進む田舎の病院で、診療所等のかかりつけ医が著しく不足する場合には、病院がかかりつけ医機能を果たさざるを得ないからである。診療報酬では、地域医療支援病院入院診療加算として入院初日に1,000点が加算され、500床程度の病院で年間1億円程度の増収になるため、経済的な意味での魅力度は大きいといえる。ただ、紹介率・逆紹介率の基準がクリアできなければ都道府県知事からの承認を受けることはできず、当該基準を満たすべく、さまざまな取り組みが行われてきた。
【地域医療支援病院 紹介率・逆紹介率の基準】
(1) 紹介率80%を上回っていること
(2) 紹介率が65%を超え、かつ、逆紹介率が40%を超えること
(3) 紹介率が50%を超え、かつ、逆紹介率が70%を超えること
【紹介率・逆紹介率の計算式】
紹介率=紹介患者数÷初診患者数×100
逆紹介率=逆紹介患者数÷初診患者数×100
とはいえ、
(残り2409字 / 全3291字)
次回配信は6月13日5:00を予定しています
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】