【国際医療福祉大学大学院 医療福祉経営専攻 教授 石山麗子】
2021年度介護保険制度改正(以下、21年度改正)から、1年が経過しようとしている。次期法改正に向けた議論が、社会保障審議会・介護保険部会で始まるこの時期、本連載の最終稿となる今回は、居宅介護支援のこの1年と、今後の介護の価値、責任について考えていく。
21年度改正では、科学的介護の確立を目指し、科学的介護情報システム(以下、LIFE)への情報提供が開始された。これになぞらえて21年度を「科学的介護元年」と称する者もおり、科学一点に価値を置いた論調も目にする。他方、LIFEの情報提供に要する時間と労力の負担、科学的介護そのものを否定的に捉える者もいる。確認しておきたいことは、科学的介護とLIFEは同義ではない。加えて、科学のみをもって介護が利用者への責任を果たせるわけではないということだ。
このような概念や価値に関連する記事は、経営上即効性のある実用的な情報ではないため、敬遠される。しかし、概念、価値の捉え方は、時間経過とともに、着実に表に現れ、時に軌道修正すら難しくする。仮に、介護に関与する我々が、こうした根源的な議論を曖昧にしたまま次期制度改正に突き進むのなら、利用者が介護保険を通じて得るサービスの価値はかえって貧弱になるかもしれないという懸念を込めて、一年の区切りとして俯瞰する。
LIFEは、科学的根拠に基づく介護を確立するために、データ収集・分析を行うものである。つまり、LIFEは科学的介護を確立するためのツールである。運用上の負担感に留意し、改善する努力は欠かせないが、近視眼的視点に陥れば、本来の目的に向かって歩む道筋を見失いかねない。
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