【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
介護事業者は「介護職員処遇改善支援補助金」の配分方法をどのように決定し、その結果、給与の改善額がいくらになるのか-。目下、介護事業関係者の一番の話題は、これではないだろうか。
介護職員の中には、「自分の収入が本当に月9,000円アップするのか」と期待と不安を持ちながら情報を待っていた人も多いはずだ。しかし、実際に1カ月の給与の改善額が9,000円となる職員はそれほど多くならないだろう。なぜなら、国は補助金(※)の交付率を、平均給付費金額と最低人員配置基準を基に決めていると思われるからだ。つまり、平均給付費と比べて算定額が少ない場合(収益が平均給付費以下)や、人員配置基準よりも上回った職員数を配置している場合は、その分だけ「1カ月 9,000円増」から遠ざかった額になっていくと考えられる。
※補助金は毎月の総報酬額に交付率を掛けた金額が支払われる。
しかし、最低人員配置基準で運営している事業者はそれほど多くない。例えば、特別養護老人ホーム(特養)の場合、「介護職員及び看護職員の総数は、常勤換算方法で、入所者の数が三又はその端数を増すごとに一以上」であり、このうち看護職員は、「入所者の数が三十を超えて五十を超えない指定介護老人福祉施設にあっては、常勤換算方法で、二以上」とされている。従って、最低基準の人員配置なら、「介護職員15人+看護職員2人」でよく、ベッド稼働率が全国平均を下回らずに運営した上で、15人の介護職員に補助金を全て均等に配分すれば、1カ月9,000円増に近くなる。
だが、定員が50人の特養で、常勤換算で介護職員を15人しか配置していない施設はほとんど見当たらない。これと同じことは、他の介護施設や居宅サービス事業所にも言えるわけで、実際に配置している介護職員の数が補助金の算出根拠よりも多いため、仮に補助金を他の職種に回さず介護職員だけに均等に分配しても、介護職員全員の給与を月9,000円引き上げられる事業所は少ないだろう。しかもこの補助金は、事業者の裁量で介護職員以外にも支給範囲を広げられるので、配分対象の職種を広げれば介護職員の支給額がさらに減ることになる。
■配分方法に正解はあるのか
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