【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
厚生労働省は24日、第23回医療経済実態調査の結果を公表した。当該調査は、医療機関の経営実態を明らかにし、診療報酬に関する基礎資料の整備を目的に、診療報酬改定の前年に実施するものである。ただ、今回の調査年度はコロナ禍であり、その評価は極めて難しく、医療機関の経営実態が適切に反映されるかが懸念されてきた。そこで、機能別集計等について月次調査を行い、2019年、20年、21年のそれぞれ6月の実績も示された。有効回答率が気になるところではあったが、病院については、前回調査の53.3%に対して52.8%と微減であり、特定機能病院は前回の97.6%に対して今回は95.4%と、ほぼ同水準であった。
表1は、病院機能別に損益差額および各費用項目の実績推移を明らかにしたものであり、20年度の特定機能病院については、過去最悪の損益差額を計上することとなった。消費税増税が行われ、税率が8%となった14年度のマイナス8.5%を上回ったことになる。ただし、新型コロナウイルス感染症関連の補助金(従業員向け慰労金を除く)を含めた場合については、マイナス2.8%まで赤字幅が縮小している。
また、DPC対象病院についても最悪の業績であるが、コロナ補助金を含むとプラスに転じている。一方で、療養病棟入院基本料1については、利益幅は縮小気味ではあるものの、コロナ補助金を含まなくてもプラスを維持できている。
今まで同様に、急性期、特に高度急性期は100床当たり医業収益について療養型の2-3倍以上だが、医薬品・材料費の割合が高いなど費用がかさむ財務体質であり、収益性が低い結果であった。
なお、20年度については、特定機能病院およびDPC対象病院で患者数減少の影響を受けて医業収益が伸び悩み、給与費比率が上昇する結果となった。給与費は固定費であるが、コロナ対応をしたスタッフに対して特別手当を追加的に支給する病院が多かったことから、患者数の大幅減少と相まって、当然の結果と言えるだろう。
病院の財務分析を考える際には、給与費比率は極めて重要であるが、それと医薬品・材料費は反対の動きをするものであり、一方が増加すれば他方が減少しなければ、財務的なバランスが崩れることになる。
具体的には、近年増加傾向にある医薬品・材料費比率が増加すれば、給与費比率は減少するはずである。給与費が固定費的な性格を強く帯びているのに対して、計算式の分母に該当する収益に高額な抗がん剤投与分が計上されれば、給与費比率は下がるからである。ただ、現実的にはその関係が保たれず、給与費+医薬品・材料費比率は、特定機能病院およびDPC対象病院でそれぞれ最悪の結果となってしまった。
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次回配信は12月13日5:00を予定しています
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