【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
国は2014年に立法化された医療介護総合確保推進法に基づき、地域医療構想を推進しようとしている。今後の人口減少や超高齢社会に対応するために、将来人口に基づいて25年に必要となる病床数を、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4つの医療機能ごとに推計し、機能分化と連携を支柱に据えた医療提供体制の構築を目指すことが、18年4月から開始された第7次医療計画にも位置付けられている。これらを実現するために、構想区域ごとに地域医療構想調整会議を設置し、関係者で協議されており、医療提供体制の再構築が進められていく。
グラフ1は20年度病床機能報告に基づき、都道府県別に4つの医療機能についての実稼働病床の割合を見たものである。高度急性期・急性期割合が最も高い東京都では、それらが7割以上を占めているのに対して、高知県や徳島県などでは5割を下回っている。全国的に急性期病床が過剰であり、回復期病床が不足すると言われており、機能転換を図ることが課題だとされている。
ただ、本連載でも取り上げてきたように、回復期機能の代表である回復期リハビリテーション病棟は収益性が高く、もうかる病棟だし(連載第136回)、地域包括ケア病棟に転換することによって経営が安定するという=資料=。これらは不足する機能であるがゆえに、診療報酬で誘導しているのかもしれないし、そもそも急性期病床よりも適合する患者が多く、稼働率を上げやすいという現実があるのかもしれない=グラフ2=。
資料
だとすれば、病院としては急性期の看板にこだわらずに、回復期的機能の病床を充実させることが財務的な意味での業績を改善することにつながるのだろうが、マクロの視点で見ればそれは医療費増につながる。もちろん地域によって、病院によって、回復期機能の病床を設けるべきかどうかについて、異なる実情があることは言うまでもない。ただ、単純に回復期病床を増やせば地域医療構想が実現できるかというとそうではなく、その在り方について改めて議論が必要だと私は考えている。本稿ではデータに基づき、その実態を明らかにする。
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