【吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 学科長・教授 京極真】
Q チームの雰囲気が悪いです。例えば、メンバー間で否定的な意見が多く交わされ、患者のために前向きにやっていこうという動きに乏しいです。また、意見の対立があるとすぐに疑心暗鬼になり、お互いに信頼し合って協調しようという関係になれていません。このような雰囲気の悪いチームには、管理者としてどう対応していけばいいでしょうか。
チームの雰囲気の悪さは、信念対立につながる問題です。雰囲気と信念対立の関わりを理解し、雰囲気を変えるためにポジティブな体験を増やすようにしましょう。ただし、回避との混同には要注意!
■まずは雰囲気と信念対立の関係に着目しよう
雰囲気って曖昧でつかみどころがないですが、要するにこれは、その場にいる人たちが醸し出しているムード(気分)です。言語化が難しいので、メンバーがどのように感じているのかを正確に把握することは困難ですが、そこにいる人々の気分が良い時はポジティブな雰囲気を感じ取れるでしょうし、気分が悪ければネガティブな雰囲気を感じ取れるでしょう。このように、チームの雰囲気にはメンバーの気分が表れていると解釈することができます。
この雰囲気は、信念対立の反応に影響することがあります。例えば、チームの雰囲気が良ければ、メンバー間で意見の衝突があったとしても、お互いに協調する努力を継続することができるでしょう。機嫌よく働いているメンバーが少なくないでしょうから、意見の衝突にもそれぞれがコミュニケーションの機会を見いだして、ポジティブに対処しやすいからです。
他方、チームの雰囲気が悪ければ、同じ意見の衝突であったとしても協力することは難しくなるでしょう。不機嫌に働いているメンバーが多勢を占めるでしょうから、意見の衝突でストレスが増大しやすく、ネガティブに対処しがちになるからです。このように、チームの雰囲気はメンバーの気分をある程度反映しているため、信念対立の状態に、大なり小なり影響することがあるのです。
チームの雰囲気が悪い時は、信念対立がエスカレーションしやすい土壌にあると考えられます。信念対立のエスカレーションとは、意見や価値観の衝突がどんどん激しくなったり、深刻化したりしていく事象を表しています。例えば、冒頭のQで言うと、前向きにやっていけなかったり、疑心暗鬼に陥っていたり、協調し合える状態でなくなったりしています。これは、信念対立が悪化しつつあるサインであり、エスカレーションのプロセスに入っていると解釈することができます。信念対立がエスカレーションし始めると、多職種連携がさらに難しくなっていきます。チームの雰囲気が悪い…と感じる時は、問題悪化のシグナルが発せられている可能性があると捉えていくとよいでしょう。
では、どう対応したらよいでしょうか。
(残り2397字 / 全3588字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】