【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
前稿では、病床機能報告のデータを用いて、地域包括ケア病棟が急性期と言えるかどうかに言及した。地域包括ケア病棟入院料および入院医療管理料を届け出る病棟の一定割合が、当該病棟を病床機能報告において急性期機能として届け出ているが、手術等の診療実績についてはやはり急性期らしさには欠ける印象があった。ただ、診療報酬における入院料等の届出と地域医療構想は別物であり、違和感があれども、そのこと自体が問題というわけではない。
診療報酬の届出と病床機能報告の状況について改めて確認するために、2020年度の届出入院料と病床機能報告の状況を見た。ここから、ICU等と特定機能病院一般病棟7対1および急性期一般入院料1で、高度急性期の届出が多いことが分かる=グラフ1=。一方で、急性期機能の届出は、地域包括ケア病棟で20%弱を占めてはいるものの、急性期一般入院料がその多くを占めている。
反対に、病床機能報告を届け出た医療機能が、どのような入院料等を算定しているかを見たものがグラフ2である。こちらも一部の例外はあるが、多くの病院においては、病床機能報告と診療報酬上の取り扱いがおおむね一致している。ただ、実数ベースにすると高度急性期および急性期病床数が非常に多いのに対して、回復期等に当たる病床はやはり少ない=グラフ3=。特に、急性期一般入院料1が突出して多く、これらの扱いは22年度診療報酬改定およびそれ以降でも、重要な論点の1つになることだろう。
なお、病床機能報告の医療機能4区分について、都道府県別に見たものがグラフ4であり、東京など東日本で高度急性期・急性期割合が高いのに対して、九州・四国などでは低くなる傾向がある。医療は西高東低であることが多く、西日本で急性期医療が盛んに行われる傾向はあるものの、それとは一致しないという見方もできる(連載第70回、第137回参照)。ただしこれは、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟の設置状況と整合しており、どの入院料の届出をしているかは、地域医療構想における議論と一定の相関があると考えることもできる=グラフ5・6=。
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後編配信は8月23日5:00を予定しています
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