【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
介護保険制度が施行された直後の通所介護は、1時間当たりの単価が特別養護老人ホームと比べて高く設定され、事業者の数も少なかったことから、顧客の確保や収益を上げることが容易だった。そのため、資金が少なくても設立できる小規模の事業所を中心に全国にその数が増えていった。
しかし、通所介護の高い収支差率は、介護報酬改定のたびに削減のターゲットとなり、現在の1時間単価は特養よりも低く設定されている。しかも全国の小規模通所介護事業所の数は、3大コンビニの合計数を上回るほど多いことから、地域によっては過当競争で経営に行き詰まる事業所も目立って増えている。そんな通所介護に、新たな追い風が吹き始めている。
2022年から団塊の世代が75歳に達するようになり、後期高齢者が爆発的に増えていく。それは、在宅で生活する軽介護者の増加と比例する。その人たちが必要とする介護は、身体機能を衰えさせないように心身が活性化するサービスだ。疾患の後遺症を治すためのリハビリテーションではなく、健康保持のための機能訓練のニーズも今後は高まってくる。そのため、最近は通所介護を利用する人が増えている。
その証拠に、顧客の確保が困難だった地域でも、新規の利用者が増えて定員を満たした事業所が少なくない。通所介護経営者からは、「待機者が増えて定員の増加を考慮している」との声も聞こえてくるようになった。少なくとも今後3年間は、その上昇カーブが続くことは間違いない。定員の規模を増やして、経営基盤を強化することも可能となるだろう。
それに加えて、脳血管疾患後遺症などのリハビリについて、医療保険でカバーされるのは急性期リハビリのみで、回復期リハビリは介護保険の訪問・通所リハビリで対応し、維持期・慢性期リハビリに関しては通所介護が対応するという流れがつくられている。21年度からの通所リハビリの基準改正で、「指定通所リハビリテーション事業所の医師が利用者に対して3月以上の指定通所リハビリテーションの継続利用が必要と判断する場合には、リハビリテーション計画書に指定通所リハビリテーションの継続利用が必要な理由、具体的な終了目安となる時期、その他指定居宅サービスの併用と移行の見通しを記載し、本人・家族に説明を行う」とされた。
これは今回、努力義務規定でしかないが、介護給付の通所リハビリにもゴールを設定して、できるだけ通所介護に移行させるという流れがはっきりと示されていることは間違いない。そうすると、次期介護報酬改定以降は介護給付の通所リハビリにも予防通所リハビリと同様に、1年以上の利用超え減算が新設されない保証はない。医療系リハビリはできるだけ早期に、福祉系の機能訓練へと移行させる圧力が強くなることはあっても、弱まることはない。
■早ければ次期制度改正で逆風
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