【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
新型コロナウイルス感染症が、変異株の影響もありこれまでにない速度で急拡大が続き、重症化も速くなっているようだ。特に大阪府では医療緊急事態宣言が発せられ、コロナ患者を受け入れている府内の59病院に対して、不急の手術を延期するなど一般医療を制限し、病床を確保するよう要請があった。すでに、新型コロナウイルスは第4波の入り口に立ったという見解もあり、「まん延防止等重点措置」の実施区域も拡大されつつある。一方で、ワクチン接種率は1%に満たない状況であり、今後も医療提供体制の逼迫が強く懸念される。
平時から主張してきたことだが、治療が終了した患者はできるだけ早く退院させる病床運用が望ましく、政策的にもこれに対する強いインセンティブを設ける必要性があるだろう。現状では一定の稼働率がないと赤字になる仕組みのため、病院としては病床を埋めることが必須だからである。ただ、空床確保は外来化によっても実現できるはずだ。
本稿では、白内障手術患者などの眼科系疾患についての実態を明らかにし、今後の外来化の必要性について言及する。
グラフ1は千葉大学病院の白内障片眼手術患者について、3日入院患者の入院経過日別の診療単価であり、2日目に手術をすることからその単価が高くなっている。ただ、入院料部分に着目すると2日目は約3.1万円で、地域包括ケア病棟の全国平均が3.2万円程度であることを考慮すると極めて低い水準だと言える。連載第141回で取り上げたように、千葉大学病院のDPC/PDPSにおける医療機関別係数は、2020年10月現在で大学病院本院のトップである。にもかかわらず、13対1の看護師配置を前提とした地域包括ケア病棟よりも低単価という事実から、そもそも病床が埋まっていることを喜べるのかという疑問が生じる。
総収入で比べると千葉大学病院の場合、3日入院で約25.8万円なのに対して、外来では約13.2万円であり、病床が空いているのであれば入院させた方がいいのではないかという議論になりがちだ=グラフ2=。これは、白内障手術患者が「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)の評価対象外であることも関係する。実際に、診療科別・MDC別の看護必要度を見ると、眼科は極めて低い評価である=グラフ3、4=。疾患別で見ても、白内障以外の網膜剝離なども看護必要度は上がらない=表1=。
そもそも眼科系疾患に、7対1のような手厚い看護師配置が必要なのかが問われている。もちろん高回転であるのが眼科病棟の特性なので、忙しくないとは言えない。2、3日程度の短期間で入退院を繰り返すからだ。だとすれば、入院せずに外来で対応することにより手間をかけないという考えもある。最初は抵抗があるかもしれないが、外来化学療法と同じように、いったん外来化をすれば、むしろそれが常態化して楽になる。
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次回配信は5月10日5:00を予定しています
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