【千葉大学医学部附属病院・副病院長・病院経営管理学研究センター長・特任教授・ちば医経塾塾長 井上貴裕】
地域包括ケア病棟の届出は増加し続けており、2019年には全国で8万床を超えた=表=。回復期リハビリテーション病棟は8万7,254床の届出があり、それには及ばないものの、今後数年の間には逆転現象が起こるだろう。
地域包括ケア病棟は、地域包括ケアシステムを支える中心的な病棟であり、地域医療構想でも全国的に不足する機能として指摘がある回復期機能とも整合する。なおかつ病院経営にプラスになるのであれば、増やすことを前向きに捉えるべきであることは言うまでもない。ただ、全国的に増加傾向にあるからといって、地域によっては充足率に差がある可能性もある。本稿では、「令和元年度DPC導入の影響評価に係る調査『退院患者調査』の結果報告について」を用いて、地域包括ケア病棟の実態に迫り、当該病棟を普及させるための今後の展望について、私見を交えて言及する。
表 ※クリックで拡大(以下同)
グラフ1は、人口10万人当たりの地域包括ケア病棟の病床数(以下、地域包括ケア病床数)であり、他の医療提供と同様にかなりの地域差が存在する。長崎県、大分県、熊本県など、九州および中国・四国などで充実度が高く、これについてもPCI実施率の地域差のように西高東低の傾向が見られる(連載第70回・137回参照)。なお、地域包括ケア病棟を届け出る場合には、データ提出が必須となっているため、当該データは19年度時点で我が国に存在する全ての地域包括ケア病棟を対象としている。連載第113回で取り上げたが、地域包括ケア病棟の入院患者は高齢者が多いため、分母の人口は75歳以上を用いている。
当該データは19年度の一時点の状況を示したものであるため、ここ3年間の届出状況の推移を見た=グラフ2=。届出病床数は多くないものの、香川県や沖縄県のように、この3年での増加率が著しい地域も存在した=グラフ3=。参考までに、都道府県別に機能別病棟構成を見たものがグラフ4になる。
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次回配信は4月19日5:00を予定しています
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