【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■東京の人口一極集中が変化
東京都の人口の転入と転出を比較した超過数の推移を見ると、1990年代後半から転入超過が続いている=グラフ1=。転入超過はリーマンショック、東日本大震災の前後で少し落ち着いたが、直近は転入超過の傾向が強くなっていた。しかし、2020年は依然、転入超過ではあるが、その人数が大幅に減った。
グラフ1 東京都の人口転入超過数 年次推移
住民基本台帳人口移動報告 長期時系列表(2019年まで)、月報(2020年分)を基に作成
20年が大幅に減ったのは新型コロナウイルス感染症の影響と考えられる。なぜなら直近3年ほどの月次推移を見ると、20年4月からトレンドが変わったためだ=グラフ2=。例年3月に進学・就職などの理由による4万人程度の大幅な転入超過が見られ、それ以外の月は数千人程度の転入超過となっていた。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、20年4月は前年同月比で転入超過が激減し、5月には転出超過となった。6月こそ転入超過に戻ったが、7月以降は直近21年1月まで転出超過が続いている。
グラフ2 東京都の人口転入超過数 月次推移
住民基本台帳人口移動報告 月報を基に作成
毎年1月の転入超過数について年齢階級別に見た=グラフ3=。東京への転入は進学や就職などの理由によるものが多い。そのため、10歳代後半、20歳代の転入が多い。なお、0-4歳は転出が多い。これは出産を機に隣接県などへ転出しているためと思われる。また30歳代後半から50歳代までは転出入がほぼ同数、60歳以上はわずかに転出が多い。このような傾向は15年から20年までほぼ同様であった。しかし21年1月は10歳代後半や20歳代の転入は大幅に減少し、0-9歳、30歳以上は転出超過となった。
グラフ3 東京都の年齢階級別人口転入超過数 毎年1月の推移
住民基本台帳人口移動報告 月報を基に作成
■一極集中の変化は就職動向に影響あり?
このようなトレンドの変化は、病院における人材採用に影響があるだろうか。20歳代前半の、東京への転入が減少したということは、東京以外の地域にとどまっている可能性が高い。20歳代前半の20年1月と21年1月の都道府県別の転入超過数を比較すると、グラフ上でマイナスの表記となる転出超過が、多くの県で抑制されたように見える=グラフ4=。
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次回配信は3月31日5:00を予定しています
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