度重なる調剤報酬のマイナス改定に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、逆境に立つ調剤薬局が増えています。そのような中、調剤以外の新たな事業を模索する動きが加速しています。
地域包括ケアシステムの中心にある「住まい」に着目し、高齢者のための住まいという新規事業に挑戦する薬局を支援するCBコンサルティング事業開発支援部の佐藤文洋次長に話を聞きました。【井上千子】
■「患者さんの住まい」は地域包括ケアの中心
2020年の薬機法改正により、21年8月から「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」の2つの施設基準がスタートします。「地域連携薬局」はかかりつけ薬局機能を担い、病後は他機関への橋渡しが期待されます。また、病気になる前の予防や維持を目的に、住民の健康相談に乗る「健康サポート薬局」を制度化するなど、地域包括ケアの中心的役割を調剤薬局に期待する国の動きは活発化しています。
このような国の方針を反映し、佐藤次長は調剤薬局事業の潮流として大きく2つを挙げます。一つが多店舗展開による規模の拡大。もう一つが国の医療・介護の方向性に沿った多角化事業です。「CBコンサルティングが支援する高齢者向けの住まいは、多角化事業の一つ」と佐藤次長は言います。
一方で多角化の中でも「住まい」に着目したのはなぜでしょうか。これについて佐藤次長は現在の医療・介護体制を川に例えて解説します。
「まず上流の最も源泉に近い所にあるのが患者さんの住まいです。中流には患者さんが集まる医療機関があり、医師・看護師らがいます。従来の調剤薬局はさらに下流に位置します」
同社では従来、調剤薬局向けに営業代行サービスを請け負っています。しかし調剤薬局ではそれ以外の選択肢として、新事業への関心も高まっていました。そこで従来の「川下」から視点を変え、「川上」への事業展開を模索することに。その中で地域包括ケアシステムの源泉に位置する「住まい」というアイデアに行き着きました。
加えて近隣の訪問介護ステーションと提携し、居住者であればすぐに介護が受けられる体制も整えました。
調剤薬局が高齢者住宅を運営するメリットとして、安定した家賃収入は大きなポイントであるものの、佐藤次長はその先の展開も見据えます。
まず住民という一定数の顧客を対象に、在宅の調剤業務を一括して請け負うことができます。入居が順調に進めば、訪問看護やデイサービスなど介護事業拡大も見込めます。さらに派生して給食やレジャー、移動販といったサービス事業への参画も視野に入れることができると言います。
「そのためにはまず住宅を建て、自らの顧客をつくり、数を押さえる必要がある」と佐藤次長は提案します。
(残り1434字 / 全2546字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】