【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
新型コロナウイルス患者が過去最多を記録し、死亡者数も増加し続け、重症者は過去最多を記録している。決して考えたくないことだが、今後も感染者および重症者が増加するという予想が多いようである。医師会、病院団体、看護協会などから医療提供体制が逼迫しており、もう限界に達しつつあるという叫びが、日夜聞こえてくる。
そんな中で、各地域で警戒ステージが引き上げられようとしており、千葉県もエリアによってステージを引き上げる方向にある。これに伴い、千葉大医学部附属病院は現状のICUの一部と一般病棟(46床)に加え、さらに1病棟(46床)を専用病床として確保する必要が出てくる。国の緊急事態に対して協力すべきなのはもちろんだが、一般病床800床のうち1割以上に当たる100床程度をコロナ対応に充てるということは、スタッフの疲弊はもちろん、通常診療に支障を来す時が迫りつつある。
ただ我々には、いついかなる時も地域の医療提供体制を崩壊させない責務があり、それが病院経営にも資することにもなる。そのためにも第1波の状況を分析し、その教訓を生かす必要がある。本稿では、新型コロナウイルス前後の入院患者の状況について2019年度と20年度の各第1四半期のデータを用いて検証した上で、コロナで入院する患者の実態に迫り、病院の戦略策定に資する素材を提供していく。
データは千葉大医学部附属病院が開講する、「ちば医経塾」に参加する任意の30病院を対象としている。ちば医経塾に参加する者は各病院から集まったデータを実名入りで比較し、自らの立ち位置を知り、次なる打ち手を考えている。なお、参加者の一般病床の平均は393床、最大が800床、最小が30床で、地理的には分散しており、DPC対象病院は27病院である。限られたサンプルではあるが、千葉県内だけではなく全国から集まっているため、一定のことが示唆できると考えている。
表1は、コロナ前後の退院患者数について入院経路別で見たものである。20年4月・5月は緊急事態宣言もあり、予定手術を制限した施設が多かったが、実はそれ以上に、「予定入院で手術なし」症例が減少したことから、検査入院等の減少を意味するのだろう。ただ、救急車搬送入院の減少は12%にとどまっており、重症な救急患者の入院受け入れは行われたので、今後も救急車搬送入院率は重視すべき指標と言えるだろう(連載第125回「コロナ下でやってはいけないこと、やるべきこと」を参照)。
表1 コロナ前後の経路別患者数
表2は、退院患者の診療領域を見たものだ。
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次回配信は1月18日5:00を予定しています
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