【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
来年4月から、介護報酬が0.7%引き上げられることが決まった。このうち、0.05%は新型コロナウイルス感染症対策に振り向ける財源として確保されており、来年9月末までに限った暫定的な引き上げとされた。それ以降については、「延長しないことを基本の想定としつつ、感染状況や地域の介護の実態などを踏まえ、必要に応じ柔軟に対応する」とされている。
プラス改定となる理由については、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「利用控え」や、感染対策への備品の購入などの支出増で事業者の収益が悪化しており、介護事業経営を安定化させるには2018年度の改定率を上回る報酬の引き上げが欠かせないと、政府が判断したとされている。
しかし、プラス改定といっても手放しで喜んではいられない。厚生労働省から今後示される基本サービス費が全てのサービスで引き上げられるとは限らない。くまなく加算を算定した上でのプラス改定だと考えるべきだ。そのため、新設の加算や、既存の加算に新たに設けられる上位加算を算定できなければ、減収となる事業者も出るだろう。
そのことについて、通所介護を例にして考えてみよう。
個別機能訓練加算に関しては、IとIIが統合された上で、常勤で専従の機能訓練指導員が提供時間を通じて配置されている場合が上位区分となる。
下位区分では、機能訓練指導員の専従配置が要件だが、「配置時間の定め」はない。しかし、それだけではなく、新たなデータベース「CHASE」へ関連する情報を提出し、そこからのフィードバックをサービスの向上に生かす事業者を上乗せして評価する方針が示されており、個別機能訓練加算は実質的に3区分の加算となると考えてよい。そうなると、CHASEへの情報提出とフィードバックの要件をクリアする加算は最上位なので、現行の同加算Iの要件をクリアするだけでは、算定単位が下がると予測される。しかも、従来はIとIIの併算定が可能だったが、改定後はそれができなくなることも明らかだ。ということは、個別機能訓練加算による収益が下がる事業者が多くなるだろう。
また、入浴介助加算については、医師やリハ職、介護福祉士や介護支援専門員らが利用者宅を訪ねて浴室環境をチェックした上で、自宅で入浴が可能となる個別入浴計画を作成することなどを要件とした上位区分を新設することになっているが、新設加算の算定を促すために、従来の入浴介助加算の算定単位が現行よりも引き下げられることが決まっている。従来の加算しか算定できない事業者は、この部分で収益減となる。
サービス提供体制強化加算も、介護福祉士の配置割合がより高い事業者を評価する上位区分が設けられることから、現行の加算の単位は引き下げられることが予測される。新設の上位区分を算定できない事業者は、これだけでも収益が下がる。
さらに、「勤続3年以上の職員が30%以上」という現行の加算要件が、「勤続7年以上の職員が30%以上」に引き上げられるので、この新しい要件をクリアできずに、その加算自体を算定できなくなる事業者も出るだろう。そうなると、大幅な減収となる。サービス提供体制強化加算のこの要件については、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、グループホーム、特定施設、通所介護、小規模多機能型居宅介護などに設定されており、その見直しによって同加算を算定できなくなる事業者が多くなることが予測される。
■“CHASE加算”をサービス種別に整理
(残り2845字 / 全4295字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】