【国際医療福祉大学大学院 医療福祉経営専攻 教授 石山麗子】
今年3月から、22回にわたる社会保障審議会・介護給付費分科会の開催と、17日の厚生労働省による介護報酬の改定率公表1)を挟み、18日に2021年度介護報酬改定に関する審議報告(案)2)3)の議論が終了した。18年度と21年度の審議報告を比較すると、違いは3点見えてくる。
1点目は、時間軸の射程は25年(「団塊の世代」が全員後期高齢者になる年)から40年(団塊ジュニアが全員65歳になる年)へ延伸したこと。2点目は、改定の柱が4つから5つになり、感染症や災害への対応力強化が設けられたこと。3点目は、18年度改定では、法改正において共生型サービスが創設され、介護支援専門員と相談支援専門員の連携について基準改定されたが、21年度改定では社会福祉法との一体的な法改正がありながらも、共生型サービスに関する実態把握や地域共生社会を進める具体的な記述はなかったことである。
審議報告のうち、居宅介護支援を見ていこう。どのような基本報酬の改定予測が立つだろうか?
介護報酬の改定率はプラス0.70%、介護事業経営実態調査の結果はマイナス1.6%4)だ。審議報告の「介護予防支援の充実」等の状況から居宅介護支援はイコールまたは微増、介護予防支援はプラスだと予想する。
加算や新たな評価の改定状況から創設されるものとして、特定事業所加算(a)、通院時の情報連携を評価する加算、ケアマネジメントを提供しながらも給付につながらなかった場合の居宅介護支援費の算定がある。
一方で、廃止される加算は、極めて算定率の低い小規模多機能型居宅介護事業所連携加算のみである。全体での予算枠は決まっている。居宅介護支援の予算枠内だけでの調整は難しそうに見える。
逓減制の適用については、全国の多くのケアマネジャーの捉え方はいかがだろうか。1回目の審議報告案が示された9日の翌日、ある地域でケアマネジャー向けの介護報酬改定に関する研修会の講師に招かれた。質疑応答で最も多く挙がったのが、この逓減制に関することだった。「この人数をこなすのは無理です」「残業しても終わりません」「そんなこと誰が言ったんですか」等の声である。この改定案は、日本介護支援専門員協会が提出した「令和3年度介護報酬改定にあたっての要望」5)に基づくものだった。つまり、従業者である介護支援専門員と、件数上限を高めることによって経営改善・経営安定に導きたい経営者の視点は、別方向を向いていると読み取れる。
ケアマネジャー1人当たりの担当件数を上げることは、経営改善を図る一要素である。しかし、
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