【小濱介護経営事務所 代表 小濱道博】
(1)介護報酬改定の方向性
社会保障審議会・介護給付費分科会での2021年度介護報酬改定の審議は、2巡目が終了して、サービスごとの審議は、11月16日の議論から3巡目に入った。現在の審議内容は、主に既存の加算の検証と算定要件を確認して、再構築する作業が行われている。このまま推移すると、来年4月の新年度から多くの介護サービスで、介護報酬の算定要件や人員基準などが大きく変わる見通しだ。全体では小ぶりなプラス改定となっても、実務的には大改定となる可能性が高い。
さらに、グループホームの人員基準の改定なども検討されている。職員の配置人数が緩和されるなどと喜んではいられない。既定の配置人数が減るということは、その対価となる基本報酬を減額することを意味する。また、必要な職員数が減った結果、余剰の人員をどう再配置するかという問題が生まれる。このあたりの情報は早く確認して、対策を取っておく必要がある。
これ以外にも、多くの加算の算定要件が見直される方向で進んでいる。現在、算定している加算が、来年の4月以降も同じ算定要件と思い込んでいると、次の実地指導で大変なことになりかねない。リハビリテーション実施計画書や個別機能訓練計画書、事故報告書など、多くの書式も様式が変更される見込みだ。また、介護職員処遇改善加算や介護職員等特定処遇改善加算の算定要件も見直される。サービス提供体制強化加算も同様だ。これらの検討作業が、審議の中で粛々と進められている段階にある。
(2)次の20年に向けた一区切りの改定
過去の介護報酬改定において、サービスごとの加算の算定状況を分析して、算定要件の緩和や基本報酬への包括化、廃止等の検討に時間をかけて集中した審議は、ほとんどなかった。介護保険法がスタートしてからの20年を一区切りとし、今回の介護報酬改定で整理を行っている状況である。コロナ禍の影響で、当初想定していた大なたを振るう改定ができなかったことも、1つの要因であろう。
しかし、2000年に介護保険制度がスタートして以降、加算の数は14倍に膨れ上がっていることも事実である。年々、その算定要件は複雑で分かりにくいものになっている。この段階で一区切りを付けて、次の20年に向かうことの意味は大きい。先行した介護保険法改正も、診療報酬改定を見据えて多くの論点が24年改正に持ち越しとなった。介護報酬改定もコロナ禍の影響から同様に持ち越される状況にある。24年は、6年に一度となる診療報酬改定との同時改定を迎えることも含めて、大転換の厳しい改定が予想される。
今回の分科会での審議経過をしっかりと把握して、分析する必要がある。それが24年に向けた事前準備となるからだ。すなわち、21年度改定と24年度改定はペアで考える必要があるということだ。
(3)財務省の介護報酬改定へのスタンス
11月2日には、財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会が開催された。その中で、21年度介護報酬改定については、コロナ禍が国民生活にもたらしている影響を考えると、4月からさらなる国民負担増を生じさせる環境にはないと、報酬の引き上げムードにくぎを刺している。
さらに、
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