【国際医療福祉大学大学院 医療福祉経営専攻 教授 石山麗子】
2020年度介護事業経営実態調査結果によれば、居宅介護支援における19年度決算の収支差率はマイナス1.6%だった。介護保険制度施行以来、継続してマイナスだったが、19年度概況調査ではマイナス0.1%で、あと少しでプラスに転じるのではないか、という明るいトレンドから一転、20年度の結果は厳しいものとなった。18年度介護報酬改定において、居宅介護支援の基本単価はプラスであったにもかかわらず、である。つまり、「単に基本単価をアップすれば経営が上向く」というわけではないことを意味する。背景や要因の丁寧な分析が必要である。
第190回社会保障審議会・介護給付費分科会(10月30日開催)の資料や、委員の発言から見ると、介護支援専門員の給与額増加や介護支援専門員1人当たり担当利用者数減少、加算の算定状況等の影響が想定される。
筆者は、過去にある法人において約140名の居宅介護支援専門員の統括を行っていた経験から、居宅介護支援事業所の収入の基盤は、第1に利用者数、第2に事業所および利用者個別にかかる加算・減算の算定数を確保すること、併せてそれらと介護支援専門員の員数とのバランスを取ることだと認識している。細かいことを言えば、どのような居宅介護支援のチームを形成すれば質が向上しながら業務が効率化するのか、同時に運営基準減算リスクを着実に回避しつつ実地指導対策にも結び付けながら、日々の残業時間をどう減少するかなどを考えながら実施していた。今回はその詳細までは触れない。
前述の分科会において示された資料では、介護支援専門員の1人当たり担当利用者数は25.2人(要支援を含めて30.8人)。筆者から見れば、すでにこの時点で経営として厳しい。平均値では偏りを知ることはできない。そこで分布を確認すると、利用者数20人未満の事業所は全体の14.3%を占めた。どのような状況にあるのだろうか。
例えば、新規立ち上げの事業所、入職したばかりの者がいる、人口の少ない地域での事業経営などが想定できる。しかし、仮に20人未満の利用者数が恒常化しているなら、もともと事業として成立しないモデルでありながらも存続している。つまり、居宅介護支援単体での黒字経営は求めず、別の収入源に依存するビジネスモデルが一定の比率で存在しているのではないか、と想像する。
一方で、逓減制の対象となる利用者40人以上の事業所は14.2%ある。その理由として、
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