【吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 学科長・教授 京極真】
Q 元気の良い職員から「もっとこうしたらいいのでは?」「現場ではこういう問題が起こっているので、こんなふうに対応したいのですがよろしいですか?」などと、労働環境に対する建設的な提案がどんどん上がってきます。内容は具体的、現実的で、医院の改善のためには必要なものが多い半面、うちの職場は何事も波風立てずに対応する傾向が強いので、積極的な提案に私自身も戸惑っていますし、他の職員からの反発もあります。どのように対応したらいいでしょうか。
現場に潜む問題の存在に気付き、「事なかれ主義」を良しとする組織文化の限界を理解し、具体的で現実的な建設的提案を生かしていきましょう。ただし、信念対立のマネジメントは必須です。
■事なかれ主義は誰の利益にもならない
建設的な提案がどんどん上がってくるということは、現場でさまざまな問題がひしめき合っているということです。さまざまな問題がなければ、職員は本来の業務を遂行することに集中するはずです。医師は医師の仕事に、看護師は看護師の仕事に専念できる労働環境であれば、職場の方向性に対して提案を行う動機を持たないからです。従って、職員から具体的・現実的・建設的な提案がどんどん上がってくるならば、現場の職員たちが、それぞれの努力では解決し難い問題に困っているんだな…と、管理職として気付く必要があります。
さまざまな問題が現場に潜んでいるならば、事なかれ主義は誰の利益にもなりません。事なかれ主義とは、波風が立たないように回避することを良しとすることです。これを前提にすると、職員からの意見は変化を促しますから、たとえそれがまっとうなものであったとしても、日々の平穏を脅かす脅威として受け取り、拒絶、排除されます。
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