【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
国は第2次補正予算の予備費を用いて、新型コロナウイルス患者を受け入れる病院のさらなる支援を決定し、医療提供体制の維持のため本格的に財源を投入している。重点医療機関である特定機能病院等について、稼働・休止病床の「病床確保料」の上限を、ICUについては13.5万円を増額して43.6万円に、その他の病床についても2.2万円引き上げて1日当たり7.4万円となった。「実際の入院診療単価はより高い水準にある」という病院も多いだろうが、それは手術等を実施して多くの材料を投入した結果であり、国の配慮は相当な水準にあると捉えるべきである=図=。
図
出典:厚生労働省ホームページ (https://www.mhlw.go.jp/content/000650008.pdf)
夜の街の飲食店は週末でも人影はまばらで明かりが減り、「テナント募集中」になってしまった所も多い。結果として、コロナによる雇い止めは6万人を超える水準にまでなってしまったし=グラフ1=、航空業界ではANAが過去最悪の5,000億円規模の赤字になる見込みで、「冬の賞与ゼロ」という報道も出ている。役割が異なるとはいえ、私たち医療関係者は国の補填に感謝しなければならない。
グラフ1
なお、交付額はすでに決定している都道府県もあれば、いまだ申請中で決定していない地域もあるようだ。ただ、交付額が決定している都道府県に立地する病院でもコロナによる減収額が全て補えるわけではなく、収支均衡には程遠いケースもあるようだ。私が関係する重点医療機関では、損失額の3分の1程度しか補填されない見込みだ。ただ、病院単位で5億円を超える病床確保料が投入されることもあり、国全体で見ると相当規模の財政支援であることは間違いがない。
とはいえ、いまだ入金がなく、資金繰りが厳しい病院では冬の賞与に支障を来す可能性もあり、1日も早い実行が期待される。さらに、基本は満額補填のようだが、都道府県によっては空床確保の考え方が違うようで、危機を支えた医療機関に対する適切な支援をお願いしたい。
前稿「現実は地域医療構想の推計よりも厳しく、幻想は捨てよ」では、日本病院会等が調査した7月までの医業利益率について前年度比較を示し、4月・5月の最悪の時期から改善傾向にあるものの、いまだ患者数が追い付かず厳しい状況にあることを明らかにした。本稿では、その後の状況に触れ、すでに昨年度並みに戻った病院の事例を挙げて、戦略とリーダーシップの重要性について語る。
表は、千葉大学病院の入院・外来別の稼働額で、ようやく9月で前年度超えとなり、
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次回配信は11月9日5:00を予定しています
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