【国際医療福祉大学大学院 医療福祉経営専攻 教授 石山麗子】
大量のデジタルデータを分析する、AIの技術発展が私たちにもたらすメリットは、単なる業務効率化にとどまらない。将来予測に基づく最適化されたサジェスチョンなど、これまでにない、新たな価値を創造する可能性を多分に持ち合わせている。まさにそれを可能としているのは膨大なデータの存在であり、「21世紀の石油」と言われるゆえんである。Googleをはじめとする巨大ICTプラットフォーマーの「GAFA」が無料サービスを提供したのも、世界中の膨大なデータを獲得する仕組みを作り上げるために他ならない。
介護領域における、データ分析の状況を見てみよう。厚生労働省では、科学的介護と称して膨大なデータを収集・分析し、そこから得られたエビデンスを介護サービスの根拠にしようとしている。データベースの種類は、介護保険総合データベース、VISIT、CHASEがある。中でもCHASEは、2020年5月に運用開始された最も新しいもので、利用者のADL、認知機能、口腔状態等、利用者の状態を示すものである。さて、ここから有効なケアの方策は得られるだろうか? そのデータは、介護における21世紀の石油になり得るだろうか?
ケアマネジメントの領域に目を向けてみよう。AIを育てるには、優れた教師データが不可欠である。どんなに膨大なデータをAIに学習させたところで、その質がそれなりなら、育つAIもそれなりのレベル止まりだ。これまでのAIケアプラン研究を見れば、ケアマネジャーが作成したケアプランを学習させる方法が主流である。では、ケアマネジャーが作成したケアプランは、教師データになり得るか? 私の答えは“No”である。これはAI研究が始まった16年から、私が一貫して主張してきたことである。
理由は4つある。
(残り3825字 / 全4604字)
次回配信は10月13日5:00を予定しています
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】