【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
新型コロナウイルス感染症患者数は落ち着いているように感じられるが、ECMOを装着する全国の重症患者について一時は1桁台まで下落したものの、再び増加傾向にある。この状況を支える医療機関、特に急性期病院の業績悪化は著しい。表1は、日本病院会等による2020年度第一四半期の月別の経営指標である。これを見ると、緊急事態宣言が発出された時期とも重なり、5月の業績が最も悪い。しかし、今年の5月は稼働日が昨年よりも2日少ない。
表1
昨年が19日だったのに対して今年は17日のため、外来収益は減少するし、手術室の平日稼働や入院収益にも、この2日減が影響を及ぼす。一方で、6月は昨年よりも2日平日が多いため、昨年6月の単月業績は他の月よりも悪かった。つまり、月別でなく一定期間を通算して見るべきであるため、表2で第一四半期全体の業績を見た。
コロナ患者受け入れ病院の医業利益率は悪化が著しく、影響はより広い範囲に及んでいることがこの表2から分かる。コロナ患者を受け入れなかった病院も含めて、地域の医療提供体制を支えているからだ。
ただ、コロナ患者を受け入れた平均400床を超える大病院は、もともと財務状況が悪く、キャッシュを持っていない所も少なくないであろう。本稿では、病院機能別の影響を整理した上で、政府の対応、そしてレセプトの請求、査定状況に触れ、今後の病院経営について考察する。
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