【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
介護労働安定センターが8月7日に公表した2019年度の「介護労働実態調査」の結果によると、介護サービスの従業員が不足していると回答した事業所は全体の65.3%を占めた。
職種別で見ると、不足感が最も高いのは訪問介護員で、回答割合は81.2%に上っている。訪問介護員は、介護施設などで介護職に就いていた人が現役を退いた後に就ける職種だが、それ故に高齢化してリタイアする人も多い。また、登録ヘルパーなど非常勤が多いホームヘルパーは、若い人にとって将来性がなく魅力に欠けると思われており、新たな「なり手」がいないという問題もある。そのサービス自体の存続が危ぶまれているが、解決の“処方箋”は見つかっていない。
その他の介護事業種別でも、介護職員の不足は一番の課題で、それは介護事業経営を継続する上での戦略上の最重要課題となっている。
この実態調査は、19年10月に行われた。そのため、数値は「介護職員等特定処遇改善加算」の算定前ということで、この新たな加算の影響で状況が改善するかもしれないと期待する声もある。
しかし、私の周囲の介護事業者を見渡しても、新加算で職員の応募数が劇的に増えたり、介護職の人から、待遇が改善して将来の不安がなくなったというポジティブな声が全く聞こえたりしなかったことを踏まえると、そのような効果はさほど期待できない。
実態調査では、介護従業員が不足している理由として、事業所の9割が「採用が困難」と答えており、その原因を尋ねたところ、「同業他社との人材獲得競争が激しい」(57.9%)という回答が最も多かった。
つまり、どの事業所でも介護職員は足りておらず、人材確保の面でも競合せざるを得ない実情が明らかになったと言える。職員の獲得競争に勝てない事業者は、生き残れないのだ。
■人材確保を国や自治体に頼るべからず
※「不足感が増す介護人材をどう確保するか・下」は、8月28日(金)5時に配信予定。
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