【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
新型コロナウイルス感染症の重症患者数は、4月末をピークに一度減少しかかったものの、8月に入り再び増加傾向にある。これは、第2波の襲来であり、現在は無症状の若者を中心に罹患しているが、今後、高齢者に広がるとの見方もある。
そんな中で、日々報道される重症患者の定義が地域によって異なっていることが明らかになった。重症患者が増加傾向にある大阪府では、ECMO、人工呼吸器装着患者に加え、ICU等の集中治療室に入室した患者が重症者であるという報告がされており、これは国の定義と一致している。
一方で、東京都ではECMOと人工呼吸器の装着患者のみを重症と定義し、ICUに入室したからといって必ずしも重症者としての報告をしていなかった。確かに、陰圧室がICUにしかないから非重症者を入室させることもあり、厳密に考えればICU=重症ではないと言える。
これは重症患者数の比較可能性を重視するか、あるいは実態を明らかにするかという議論に通じるものであり、いずれが正しいということでもないだろう。ただし、最終的には都道府県間の比較可能性を担保するために、東京都は国の基準に統一することになった。
この重症という定義は、我々を取り巻く環境においてもしばしば変更されるものである。診療報酬改定ごとにその考え方が変わり、我々は一喜一憂しがちである。また、重症の定義が変われば、病院の行動も変わる可能性がある。
例えば、
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次回配信は9月7日5:00を予定しています
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