【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
有効求人倍率の下落が止まらない=グラフ1=。これに伴って失業率が上昇しており、つい最近まで働き手がいないと嘆く経営者が多かったのが嘘のようだ。さらに、早期退職者の募集があちこちで行われており、このことは医療機関にも影響を及ぼす。関連業界では、製薬会社でもリストラが既に始まっている。
例えば、業界で国内最大手の武田薬品工業は、組織力の向上策として、「自らの生涯設計に基づき転進を希望する従業員に対しては、早期の退職と転進を支援する『フューチャー・キャリア・プログラム』を導入する」方針をホームページで明らかにしている。これは希望退職制度のことを意味し、リストラの一環と捉えることもできる。
実際、国内で新型コロナウイルス感染症が蔓延してから、製薬会社のMR(医薬情報担当者)は病院への出入りが禁じられるケースが多く、医薬品の情報提供の在り方が変わってきている。
また、これまで製薬会社のサポートによる講演会が各地で開催されてきたが、それも相次いで中止になっており、今後はオンラインでの講演会が中心となっていくことが予想される。そうなると、MRが大量に不要となる可能性もある。
グラフ2は、国内でのMR数の推移を示したもの。それによると、MRは2013年の6万5,752人をピークに減少の一途をたどっており、5万人を下回るのは目前だ。
MRは高年収で、他の医療職よりも転職がしやすい上、医療に携わるやりがいのある職業というイメージを持つ人が多いのではないだろうか。
しかし、新型コロナに伴って、「MRが病院に来なくても困らない」と考える医療者が多く、それでも一定の売り上げが期待できる製薬会社としては、今後のMRの在り方を考える時期に来ているだろう。前述した武田薬品工業のケースに限らず、早期退職優遇制度を既に導入している同業他社も多く、MRの数は今後減少することが予想される。
では、医師らのパートナーとして医療を共に支えるMRを、医療界として有効活用する方法はないのだろうか。
■MR経験者の可能性
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