【横浜市立大大学院データサイエンス研究科 准教授 黒木淳】
緊急事態宣言が解除され、経済活動も活発化した。
新型コロナウイルス発生前に社会が戻るのではなく、新型コロナウイルス発生前後で非連続性へ社会が大きく変化したと感じている。例えば、密閉・密集・密接の3密を避ける方針によって、対面によらないテレワーク推進のための働き方改革や、遠隔に関する事業の実施などは、今後ますます議論が進むであろう。
上場企業において、6月は決算発表および株主総会の時期である。5月から6月にかけて、幾つかの会社では、新型コロナウイルスの影響による中期経営計画の見直しが行われている。この見直しの内容には、目標値の修正だけでなく、ビジネスモデルや事業内容、組織構造、経営管理システムそのものの変革を多く含んでいる。今後、対面により生み出された価値が改めて見直される一方で、遠隔中心の社会の限界も表出するかもしれない。
世界各国に比べると、日本は「病床数が多い」「在院日数が長い」、さらには「無駄がある」などと指摘されていた。しかし、新型コロナウイルスに対応する際に、多くの病床とそれに付随する医療機器のおかげで、助かった命が多くあるのではないだろうか。今後、病床数を多過ぎるとみなし、極端にまで減らすという論調は、おそらく支持されないであろう。新型コロナウイルス前の価値観の一部が、非連続に変化した一例であるのかもしれない。
各病院が外来・入院共に、新型コロナウイルスによる影響を大きく受けているのは確かであろう。経済活動が再開したからといって、外来や入院を含む診療全てがそれ以前の状態に戻ることは想定しにくい。従って、中期経営計画や年度計画をはじめとした計画や、管理の方法を再検討する必要性がある。
これらを踏まえて、今回は新型コロナウイルスによって影響を受けそうな、データ分析の活用策の一つとして、医療従事者や職員に対するインセンティブを取り上げる。
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次回配信は7月31日5:00を予定しています
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