【小濱介護経営事務所 代表 小濱道博】
改正介護保険法が6月5日に国会で成立した。今後の焦点は、社会保障審議会・介護給付費分科会での介護報酬改定審議に移っている。これからは、前回の2018年度介護報酬改定の検証を進めながら、21年度改定の審議が進められていく。
6月1日に行われた分科会では、21年度改定における4つの論点である、(1)地域包括ケアシステムの推進(2)自立支援・重度化防止の推進(3)介護人材の確保・介護現場の革新(4)制度の安定性・持続可能性の確保-から、(1)地域包括ケアシステムの推進についての議論が行われた。今後、論点が順に審議され、通常は2巡目の審議で方向性がまとまる。さらに審議が必要な項目については、3巡目の審議が行われるのが一般的だ。その間に、業界団体へのヒアリングなども行われる。
例年では12月に審議会の意見がまとめられ、1月に新しい介護報酬単位が答申される。その後、解釈通知、Q&Aなどが3月から4月にかけて出される。今年の場合は、コロナ禍の影響もあって審議が年越しとなる可能性は捨て切れないが、遅くても来年1月にはまとまると思われる。では、各論点について見ていこう。
(1)地域包括ケアシステムの推進は、医療・介護の連携の推進がベースとなる。「在宅限界を高めるための在宅サービス等の在り方」「介護保険施設での対応の在り方に加え、高齢者向け住まいにおける更なる対応の在り方」「人生の最終段階においても本人の意思に沿ったケアが行われること」などの観点での方策が主なテーマとなる。在宅限界とは、可能な限り在宅で過ごす時間を長くすることを言う。
これらに加えて、認知症への取り組みについての方策も課題に挙がっている。
もともと地域包括ケアシステムは、介護施設に入所せず、病院に入院せず、可能な限り在宅で過ごすことを目的とした考え方である。現在は、その上位の概念として、地域共生型社会の実現が示されていて、地域包括ケアシステムはその実現のための戦術に位置付けられている。さらに、施設の役割や高齢者住宅の在り方が問われる。特に介護老人保健施設の在宅復帰の強化や、高齢者住宅への囲い込み対策の強化が懸念される。
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