【横浜市立大大学院データサイエンス研究科 准教授 黒木淳】
緊急事態宣言が25日に解除された。
本学では、5月7日から遠隔授業がスタートし、今のところ大きな問題もなく経過している。この間、全学生に対してアンケート調査を実施し、学生ごとにアラカルトで支援することができた。もちろん学生側からすると不満もあるかもしれないが、学生数が5,000名未満である小規模大学としての強みが存分に果たされたように思われる。
緊急事態宣言が解除されたとはいえ、今後すぐに対面授業が実現するとは考えにくい。また、全学で教職員・学生共に情報基盤の環境整備が行われたため、今後は対面と遠隔の組み合わせが重要になってくるのではないかと考えられる。宣言発出から5月上旬までの約1カ月、毎日データをモニターしながら、さまざまな新しい対応に忙殺された。この経験は、今後の糧となると信じている。
病院経営においては、教育界よりもさらに課題に行き詰まっているように思われる。緊急事態宣言が解除された今、日常を取り戻す努力をするとともに、新しい戦略を考えるステージに進まなければいけない。そのためには、財務情報・非財務情報を用いながら、今後の病院経営の在り方を計画することが大事である。
そこで、今回と次回は、新型コロナウイルスへの対応の先を見据えて、財務・非財務情報を用いて業績を改善したA病院の事例について紹介したい。
A病院は地域における中核病院であり、筆者が間接的に経営改善に協力している病院である。2015年度までは経営改善に部分的に取り組まれたものの、病院全体には浸透していなかった。さまざまな試みが行われたものの、数億円の赤字が毎期計上され、経営改善を急いでいた。病床稼働率は84%前後であり、診療科単位の意思決定が尊重される環境にあったが、「何をすれば業績が良くなるのか分からない。率直に教えてほしい」ということを、現場の医師から何度か伺っていた。
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