【横浜市立大大学院データサイエンス研究科 准教授 黒木淳】
政府は、5月6日までとしていた緊急事態宣言を5月31日まで延長することを決めた。各病院においても、新型コロナウイルス感染拡大による未曾有の事態に苦悩されている。臨床を行う病院、医療従事者に心より感謝している。
前回の原稿にも記載したが、以前から各病院に新型コロナウイルス感染症に関する事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)の策定を推奨してきた。参考として、シンガポールでは中小企業を対象として1月末にはBCPガイドラインを公表しており、日本の現地法人や支社ですでにBCPが策定されているとの情報を得ていたためである。
政府においても、緊急事態宣言を解除する基準について14日をめどに公表する考えだ。病院においても、どのようなタイミングでどのような対応をするのか、リスクごとに事前に検討しておくことは必須であり、医療業界の企業や関連組織にもぜひ新型コロナウイルスへの前向きな対応を検討いただきたい。確認すると、シンガポールのBCPガイドラインは4月1日に早くも改訂されている。ぜひ参考にしてほしい。
新型コロナウイルスの多様な情報が飛び交う中で、病院経営は外来患者の減少、入院病棟転換の可能性の模索、新型コロナウイルス感染者への対応など、さまざまな課題が表出していることが予想される。そこで今回は、新型コロナウイルスを含む多様な非財務情報を用いた、経営戦略への貢献について紹介したい。
経営戦略に対するアプローチとしては、例えば「SWOT分析」や「5フォース分析」など、幾つかのフレームワークが経営学の中で紹介されている。本稿では、これらを包含し、普段の病院での事業活動、PDCA (Plan-Do-Check-Action)につながる、中長期経営計画の立案を想定する。
中長期経営計画の立案に向けては、目標とする期間に向けた、外部環境と内部資源を分析することが多い。第1に、目標とする期間は、病院では3年ないし5年が多いが、現在は地域医療構想が想定する2025年や、その後人口が大きく減少する40年までを見据える病院が増えている。
第2に、目標とする期間を定めた後、その期間およびその後において、外部環境がどのように変動するかについて考察する。外部環境の分析においては、人・物・金に該当する3つの市場、すなわち労働市場、製品・サービス市場、資本市場の3つについて考慮することが必要となる。
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