【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
2020年4月18日、厚生労働省は、「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その12)」において、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、重症・中等症の患者を扱う医療機関に対する臨時的な診療報酬の取り扱いを示した。
重症系ユニットである救命救急入院料、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料において、新型コロナウイルス患者を受け入れる場合には、平時の2倍の診療報酬が算定可能であり、急性血液浄化(腹膜透析を除く)を必要とする状態、急性呼吸窮迫症候群または心筋炎・心筋症のいずれかに該当する患者については21 日まで、体外式心肺補助(ECMO)を必要とする状態の患者は35日まで算定が可能となった。
さらに、新型コロナウイルス感染症患者に対する、医療従事者の感染リスクを伴う診療に係る評価として、看護配置に応じて二類感染症患者入院診療加算に相当する金額が算定でき、なおかつ、届出は不要とされた。
これは、重篤な新型コロナウイルス患者を受け入れる医療関係者に対する、国からの感謝と励ましの気持ちの表れである。経済が失速する中で、重症患者を受け入れる急性期病院に対する大いなる配慮をしていただいたことに、われわれは深謝しなければならない。
なお、わが国のICUは2対1看護であり、患者2人に対して1名の看護師配置を行うことが特定集中治療室管理料および救命救急入院料2・4の施設基準では求められている。しかし、20年4月1日の日本集中治療医学会「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する理事長声明」によると、重症化した新型コロナウイルス感染症患者の治療をICUで行うには、感染防御の観点からも1名の患者に対して2名の看護師が必要であるという。これは、一般的な8床のICUでは、新型コロナウイルス感染症の患者2名を収容した時点でマンパワーが手いっぱいとなり、その他の重篤な救急患者や術後患者への対応ができなくなることを意味する。
だとすると、特例の診療報酬では必ずしも十分とは言えず、さらなるマンパワー不足が今後あちこちで顕在化する可能性もある。ただし、20年4月20日の「日本COVID-19対策ECMOnet」によると、これまでのECMO治療患者は90名で、治療終了患者が52名(38名は治療継続中)、そのうち回復が35名(67%)、死亡17名(33%)と報告されている。全国単位で見れば、現状は「まだ何とかなる状況」という解釈もできるかもしれないが、ECMOを回すためには熟練した相当数の医療スタッフが必要となる。今後、感染症患者が増え続ければ、医療が崩壊する危険性も指摘されている。
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次回配信は5月11日5:00を予定しています
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