2020年度診療報酬改定では、400床以上の病院が地域の基幹を担う方向性が示された。言い換えれば、200床以上400未満の病院の役割が見えてこない。
対談では、中央社会保険医療協議会の委員を務める全日本病院協会の猪口雄二会長と、井上貴裕氏(千葉大学医学部附属病院副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長)が、改定のキモを話し合った。「7対1が空くから」と地域包括ケア病棟に転換する方策は行き詰まり、本当の機能を生かす時期を迎えている。【進行・構成、大戸豊】
対談は3月11日に行った
猪口会長(左)と井上氏
井上 猪口先生の病院(寿康会病院、東京都江東区)は「地域包括ケア病院」だ。
猪口 ケアミックスだったが、49床全て地域包括ケア病棟にした。平均在院日数は30日弱で、他院から来るポストアキュートは半分くらい。残り半分は、実は急性期の患者だ。
当院は在宅療養支援病院だが、患者を直接受けることが多いのは、4つの診療所(連携型の機能強化型在宅療養支援診療所)、3つの特別養護老人ホーム、2つの介護老人保健施設だ。
内科的な治療やリハビリなどを中心に診ており、手術は大きな病院にお願いしている。
井上 収入的によくても、全病床にする病院は少ない。
猪口 急性期なら入院直後の収入が最も高く、日が経つほど下がっていくが、地域包括ケア病棟は入院料が退院まで一定だ。疾患にもよるが、2週間以上の入院なら、総収入は急性期(10対1)を上回るだろう。
「400床を超える急性期病院なら、基幹的な病院として機能せよ」というメッセージが今回出た。その一方で、地域包括ケア病棟が中心の病院もないと、地域の医療が回らない。
■定額負担の徴収義務が拡大、再診の患者からも取れるか
井上 紹介状なしで受診した患者から、定額負担の徴収を義務付けられる対象が、200床以上の地域医療支援病院まで広がる。
猪口 地域医療支援病院は、地域で紹介患者を受け、逆紹介していく位置付け。定額負担が入るのは仕方ないだろう。
千葉大学医学部附属病院では、どのように徴収しているのか。
井上 初診で紹介状がなければ、1万1000円を徴収する。1日に数人が該当するが、初診の25倍はいる再診患者からは選定療養費5500円の設定はあるが、実際は徴収できていない。「大学病院がかかりつけ」の患者も多く、ここを整理しないと、本当の機能分化にはならない。
猪口 退院の際に他の医療機関を紹介したが、そこへは行かずに再度来院した人が、再診の定額負担の対象では。
井上 でも、診療所の診療情報提供料(I)の要件には、患者の同意がある。
紹介元に戻りたくない人もいる。ずっと来ている人に「あなたはうちで診る対象ではない。他を受診してください」と伝えても、「嫌です」と言われればそれまで。
再診患者から定額負担を取ろうとしても、もめるだけだ。医事課も嫌がる。
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