【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
■病棟を閉鎖してまで患者を受け入れる病院も
新型コロナウイルスが猛威を振るっており、世界を震撼させている。我が国では3月13日に新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正法が成立し、オーバーシュート(爆発的な感染拡大)の回避のために、緊急事態宣言さえ発動できる状況になりつつある。新幹線は空席ばかりで、人々の往来も平時とは全く異なる状況だ。経済に甚大な影響を与えていることは周知の事実であり、各種の財政支援などが検討され、実施されつつある。目下のところ、失業や株価対策などに注目が集まっているが、社会が変化すれば病院経営も影響を受ける。
今回のような有事の際には、急性期病院が果たすべき役割は非常に大きく、実際に感染症病床を有する病院を中心に、新型コロナウイルス患者の入院患者の受け入れを行っている。
私がアドバイザーを務める病院では、このような際に重要な役割を果たしており、地域にもよるが、1病院当たり2-5人程度の入院患者を受け入れているケースが多い。ただ、感染症病床だけで受け入れができているかというと、必ずしもそうではないため、病棟を閉鎖してまで受け入れている病院もある。もちろん、このような事態には、急性期病院は何が何でも地域のために、社会のために全てを犠牲にしてでも闘うものだし、今回もそのような対応をしている。
とはいえ、我々にとっても、最前線で闘う職員やその家族の安全が確保されなければ、継続的な医療提供ができなくなる。企業によっては在宅勤務が許されるかもしれないが、命を預かる病院職員にはその選択肢すらない。
さらに、財務的に極めて厳しい状況にある高度急性期病院に患者を集約するのだとすれば、それらの病院の業績が悪化する危険性も否定できない。
今回は、新型コロナウイルスの環境下での病院経営について、私見を交えてお伝えしたい。
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次回配信は4月13日5:00を予定しています
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