【法律事務所おかげさま 代表弁護士 外岡潤】
利用者やその家族から、施設・事業所に対してなされるどう喝や嫌がらせ等のケアハラスメント。第1回は総論として、ケアハラスメント対策の心構え(「まず自分を守り、そしてご利用者を守る」)や基本的な対処法を、フローチャートを用いて解説しました。その主なポイントは、次の3点です。
今回は、このポイントがどのように現場で実践されるかイメージを持っていただくために、架空の事例を基にしたケーススタディー形式でお伝えします。
■事例:施設に怒鳴り込み、職員をどう喝するご家族
特別養護老人ホームに入所しているAさん(80代女性、要介護4、認知症)は、生活保護受給者。Aさんの長男(以下、長男)が身元引受人として入所契約を交わしたが、長男も病気のため就労しておらず生活保護を受給している。
長男は週2、3回施設に来ており、保護費は長男が管理している。長男は来所するたびに、目につく職員に対し、「笑顔であいさつできないのか」「俺は客なんだからもっと丁寧に対応しろ」等の暴言やどう喝を繰り返し、職員は皆おびえていた。
他の親族として長女がいるが、遠方に住んでおり疎遠とのことで、施設から連絡を取ったことはない(連絡先は入所時に聞いている)。
Aさんは、冬場でも夏物の肌着しか長男から与えられておらず、寒そうにしていた。そこで施設職員から、冬物の下着を持参していただくよう長男に伝えたが、面会時に何度伝えても対応していただけず、やむを得ず福祉事務所に相談した。
ある日、長男が来所し、施設長に対していきなり「何で勝手に福祉事務所に電話したんだ。嫌がらせのつもりか」と怒鳴った。施設長が事情を説明しても話を聞こうとせず、「個人情報の侵害だろうが。役所にクレームつけるからな」等とわめき散らしていたが、次第にエスカレートして施設長に対し、「お前、表に出ろ。殴ってやる」と発言した。
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