【一般社団法人リエゾン地域福祉研究所 代表理事 丸山法子】
「リーダーはビジョンを語れ」「スタッフのやる気を後押しせよ」「対話を増やせ」-。そう考えて、誠実に取り組んでいる施設長は多くいらっしゃるでしょう。介護のイメージを変えようと制服を明るい色にしたり、「笑顔と優しさが大事」とサービス業らしさを前面に出す指導をしたりと、工夫に工夫を重ねます。しかし、思えば思うほど加速度を上げて成果が出ていないような、また、日々の業務に追われる様子を見ては、ビジョンの実現までには程遠いと嘆いたりすることはありませんか?
理想の介護サービスも、理想の地域づくりも長期戦です。「気長にじっくりと」なのですが、むしろ時間をかけるなら戦略的に、事業所の未来のために取り組んでいきたいですね。そんな意識の高い施設長がつい陥りがちな落とし穴と、その対策についてお伝えします。
「高齢者の安心のために」「幸せを実感する介護を」「豊かな老後を支える」のフレーズが、その施設長の口癖でした。福祉職らしく共感力を高くして、笑顔で声掛けをし続け、地域活動にも意欲的で、「子ども食堂を始めたい」と夢を語り歩いています。ところが、スタッフはというと、「また言ってる」「分かるけど私たち忙しいから」と聞き流しているようでした。こんなに熱心なリーダーがいるのに、なぜでしょう。
見ている世界が崇高すぎて、現実の課題に具体的な対処がないのです。その施設長はいつしか「裸の王様」と言われ、定年を迎えると再雇用なく失意の退職となり、職場を後にしました。
ビジョンを語るのは必要ですが、ビジョンを語るだけでは変えられません。大風呂敷を広げっ放しにしては、何も進みません。具体的に組織を変えていくために、本業である介護サービスから派生した地域貢献活動は、決まったノウハウや制度がないことから余計に準備と戦略が必要です。「言う、語る」だけでは聞き流されます。声が大きくなると、人は耳をふさぎます。スタッフや地域住民が受け止められる伝え方と、流れを作ることが必要なのです。
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