【吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 教授 京極真】
Q スタッフの出来が悪くてイライラします。例えば、書類仕事を依頼すると、誤字脱字が多いし、文章が下手で、毎回修正が必要です。「なんでこんなこともできないのか!?」と叱責すると、おどおどしながら「すいません…」とは言うものの、やっぱり同じ問題を起こします。だんだんこちらが消耗してきました。辞めてもらうしかないのでしょうか。
「失敗する→叱責する→萎縮する→失敗を重ねる」という悪循環に陥っている可能性があります。この構造が変わらない限りは、スタッフを入れ替えても同じ問題が起こり得ます。なので、自身の行動パターンから変えていき、失敗を繰り返しにくい構造をつくっていきましょう。
■萎縮して失敗を繰り返しているのかも
この事例では院長が叱責するため、スタッフが萎縮してしまい、問題を繰り返している可能性があります。仕事で失敗した時に、「怒られる」というプレッシャーがあると、余計なストレスを生むので、むしろ失敗を引き寄せることがあるからです。
例えば、あるスタッフは優しい医師とならスムーズに仕事ができるのに、よく怒る病院長の補助に入ると決まって失敗していました。本人に理由を聞くと、「失敗してはいけない…」と思えば思うほど、ミスをするというのです。萎縮すると不要な緊張を生み出し、思わぬ失敗を引き起こしやすくなるのです。
しかし、「仕事なんだから、しっかり全うしなければならない。ミスを繰り返したスタッフが怒られるのは当たり前ではないか」と疑問に思われる方もいらっしゃいます。確かにそのお気持ちはよく分かります。仕事である以上は、与えられた役割を全うしてもらいたいと考えること自体は、まったく問題ありません。
ですが、その目的を達成するために「怒る」という手段はうまく機能しません。「失敗する→怒る→萎縮する→失敗する」という悪循環を引き起こすことになるからです。特に、院長とスタッフの間には権力差がありますので、怒りによって不要なプレッシャーを生み出しやすく、普通よりも悪循環に陥りやすいから注意が必要です。
従って、この事例では失敗を重ねるスタッフが悪循環に陥っている可能性を考慮した対応が必要です。たとえ現スタッフに辞めていただいても、失敗に対して叱責するという対応を変えない限りは、ずっと同じ問題が続くと思ってください。変わるべきはスタッフではなく、院長自身かもしれません。
では、具体的にどうしたらいいでしょうか。
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