【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
通所介護の事業戦略を考えるとき、一番のネックは国の方針にブレがあることではないか。報酬改定の方向性に一貫性がないため、適切な事業戦略が見えにくくなる。
介護保険制度が始まった当初の通所介護費は、1時間当たりの単価は、特別養護老人ホームの単価より高額だった。その後、経営実態調査のたびに「収益率が高過ぎる」と批判され、介護報酬改定では毎回引き下げられ、現在では特養の単価より低くなっている。
国は規模別報酬を取り入れる際には、スケールメリットが働かない小規模通所介護の報酬を高く設定し、小規模事業所が減ることを防いだにもかかわらず、2015年度の介護報酬改定では、小規模通所介護の事務経費を高く見積もり、収益率が高過ぎるとして単価を引き下げ、その一方で、収益率が低かった大規模通所介護の単価を上げた。ところが18年度改定では、経営実態調査の結果、小規模通所介護の収益率が大幅に低下し、単年度赤字になる所も出てきたため、大規模通所介護から財源を削り取り、小規模通所介護に補填するという、3年前とは真逆の対応をしている。
単価を下げたサービスの収益率が下がるのは当然だ。国には一貫的な方針が全くなく、場当たり的な処方を繰り返すのだから、今後もどうなるか読めない。
そんな中で小規模の通所介護事業は、比較的資金をかけずに立ち上げることができるため、全国的に爆発的に増え、要支援者の通所介護が地域支援事業化された以降も、小規模の通所介護だけで2万件を超えている。介護保険のスタート当初は競争相手もなく、通所介護事業所を立ち上げさえすれば、顧客確保に困らなかったが、現在は顧客確保の競争が全国各地で進んでいる。
このこと自体は顧客にとっては喜ばしい。「顧客に求められるサービスは何か」という視点から、事業所間で質をめぐる競争に至る可能性が高いからだ。その結果、負け組は事業撤退・廃業を余儀なくされるだろうから、経営者にとってはつらいところである。
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次回配信は11月28日5:00を予定しています
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