【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
高額な抗がん剤などの影響により、多くの急性期病院では材料費比率が上昇傾向にある。これによって、増収になり、診療単価は上がるものの、利益は増加しないというパラドックスに陥っているケースは少なくないだろう。「利益なき増収には価値がない」と、その診療に対して疑義を呈する病院経営者もいるが、高度医療を提供しようとすれば、高額な材料を使わないという選択はないし、仮に使わなければ他の医療機関に後れを取り、優秀な医療職も離れていくだろう。ただ、材料費比率の高騰は、消費税問題も絡んで、病院の財務状況を考えると決して無視し得ないのも事実である。特に急性期を志向すればするほど、この傾向が顕著になる。
今回は材料費比率が高いこと、裏を返せば限界利益率が低いことは何を意味するのか、さらにその対策を考える。
表1は、医療経済実態調査の結果を病院機能別に示した。特定機能病院は医薬品および材料費比率が38.5%と非常に高く、一方で療養病棟入院基本料1を届け出る病院では15.1%と非常に低い傾向にある。これは高度医療を提供するほど、材料が必要になることを意味し、結果として損益差額も特定機能病院とDPC対象病院ではマイナスになっている。もちろん赤字かどうかは材料費比率だけで決まるわけではないが、急性期病院であれば、医業収益の25-40%と一定割合を占め、財務状況に与える影響は大きい。ただし、連載第39回で示したように、材料費比率は外来を院内処方にすれば高まる。入院と外来は分けて論じるべきである。
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