【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
■7対1と10対1が同じ補てん率で適切な対応は可能なのか
消費税問題が病院、特に急性期病院経営をひっ迫させてきた。保険診療部分については消費税は非課税とされており、医療機関などが患者から消費税を受け取ることはない。一方で、医療機関や調剤薬局が医薬品や診療材料を購入したり、外部委託する際には、消費税を支払う。
2014年に消費税率が5%から8%に引き上げられた際に、初再診料や入院料といった基本診療料で補填された。個別項目は診療報酬の改定等で廃止されることもあるので、政策的にはこのような補填のあり方は妥当だといえるだろう。14年度の消費税増税に伴う医療機関の消費税の補填率について、厚生労働省は、15年11月30日時点で結果を示しており、一般病院全体では101.25%、精神科病院では134.47%、特定機能病院では98.09%、こども病院では95.39%で、問題ない水準と考えていた。
しかし、再度調査したところ、データに誤りがあったことを、18年7月25日の中央社会保険医療協議会(中医協)の分科会で認めた。複数月にまたがる入院について入院日数を重複してカウントしており、入院料が過大計上されて、入院料に上乗せされた消費税対応部分が大きくなっていたという。
結果、補填率は=表1、2=、16年度は病院全体で85.0%、病院機能別等では特定機能病院で61.7%、精神科病院で129.0%だった。また、一般診療所は111.2%だった。病院、特に特定機能病院のような高度医療を提供する施設では、初再診料や入院料よりも手術料などのウエートが多く、手術をすれば多額の診療材料が必要になるため、補填不足が生じるのはある意味当然といえるだろう。一方で診療所は、初再診が収入で一定の比率になるため、そこで補填されることはプラスに作用することになる。もちろん、診療所でも透析クリニックや眼科で日帰り手術などを実施する場合には、補填不足が生じるケースは出てくるだろう。
表1 2016年度 消費税補填状況の把握結果【全体】
2018年7月25日「第16回 医療機関等における消費税負担に関する分科会」資料より
表2 2016年度 消費税補填状況の把握結果【病院】
2018年7月25日「第16回 医療機関等における消費税負担に関する分科会」資料より
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次回配信は9月2日5:00を予定しています
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