【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
■診療報酬におけるICU評価の経緯
集中治療室は医療の質と経済性に甚大な影響を及ぼすため、急性期病院が機能を高めるために、整備や活用をどう考えるかは極めて重要なテーマだ。
2014年度診療報酬改定では、特定集中治療室管理料に大幅な変更が加えられ、点数を大きく引き上げた“上位加算”が新設された。上位加算に該当するのが特定集中治療室管理料1と2で、「スーパーICU」と呼ばれたりもする。
加算の評価は、集中治療医が主治医であること、あるいはICU入室患者に集中治療医がコンサルタントを行うといった、診療密度が高い充実した体制を有するICUを評価する趣旨だった。上位加算の施設基準を満たすためには当初、特定集中治療の経験を5年以上有する医師を2人以上配置し、1床当たり20平方メートル以上、専任の臨床工学技士が常時院内で勤務することが求められた。「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)も、下位基準となった特定集中治療室管理料3・4よりも10%高く設定された。上位加算の質については、連載第43回でも言及したが、必ずしも重症患者を受け入れているわけではなく、アウトカムが優れているわけではないことを、限られたサンプル数ではあるが検証した。ただ、1日約13万円の治療室として届け出が可能となれば、病院経営にとって大きなプラスなのは言うまでもないし、国民医療費の効率的な利用を促進するという意味でも、さらに検証する意義は大きい。
今回はICUの算定状況について第3回NDBオープンデータ(2016年度診療分)等を用い、地域差の実態を明らかにし、そこから見える課題について言及する。
■ICU上位加算の地域差とその要因
グラフ1では、都道府県別に人口10万人当たりの特定集中治療室管理料1・2、特定集中治療室管理料1-4の算定件数、および特定集中治療室管理料算定患者に占める上位加算に該当する特定集中治療室管理料1・2の算定率を見た。高知や島根は人口当たりで、特定集中治療室管理料1・2の算定件数が多く、算定率も高い。一方で、ICU上位加算の算定がゼロの県も存在し、大きな地域差があることが分かる。
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次回配信は7月22日5:00を予定しています
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