【一般社団法人リエゾン地域福祉研究所 代表理事 丸山法子】
「ケアを提供したよ」ではなく「ケアの結果、状態が良くなったね」に対して、報酬が支払われるのがアウトカム評価です。介護業界はこのアウトカム評価に向けて、経営改善することが求められています。
毎月の数字の動向が気になりますが、元来、良い介護事業者を目指す経営者は、経営センスよりも福祉への情熱を優先させてきました。志の真逆を向いて、稼働率、人件費率、利益率などの数字と取り組まなければなりません。腕利きの事務長や、信頼できるコンサルタントがいてくれると心強いですが、先の見通しが立たないままだと報酬改定の10月が怖くてたまらないでしょう。
とりわけ10月の特定処遇改善加算については、「勤続10年以上の介護福祉士」を中心にスタッフの給与改善を行うことになり、事業所の裁量が相当程度認められています。解釈が各事業所に任されるのであれば、どのように判断するべきでしょうか。
まずは、こうありたいという「事業所のゴール」と、新たに始めたい「サービスメニュー」を決めます。そして、これを実現できる必要な人材の数、能力、経験値を見極め、それにふさわしい人材を育成し、その人が手厚い処遇を受けるような独自の給与体系にして将来に備えるという方法が考えられます。頑張っている人や、事業所が欲しい人材に手厚くする仕組みです。
しかし、その判断は複雑で正解がなく、どうしてよいか分からない怖さは拭えません。その結果、「保留・様子見・先延ばし」という判断に落ち着いてしまっているように見受けられます。
■口コミや人の目を意識し、事業所内の点検を
「怖さ」は他にもあります。「古いなあ」などの口コミ評価です。利用者の目に入る建物や設備をはじめ、破れかけた季節外れのポスターや色あせた案内板、いつ行ったのかも分からない旅行写真といった掲示物、薄暗い蛍光灯と廊下、日焼けした座布団からくるほこりっぽい匂い、寄贈物と思われる名前入りの絵画や書…など、例を挙げると切りがありませんが、これらは「ザ・昭和」「古いわね」となります。
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