【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
介護報酬の改定が行われた翌年は、次回の報酬改定に備えた議論が行われるものの、通常は制度運営に影響する大きな改正や改定は行われない。しかし、今年10月に予定される消費税の引き上げに合わせた報酬改定も予定されている。
■経験ある介護福祉士全員が8万円改善されるわけではない
改定率は2.13%(処遇改善1.67%、消費税対応0.39%、補足給付0.06%)で、区分支給限度額も増税分を引き上げる。介護報酬は2年連続の引き上げとなるが、それは消費税の引き上げのみに対応しており、事業者の収益増にはつながらない。にもかかわらず、それは2021年4月の報酬改定には逆風となるもので、手放しで喜べない。なぜなら財政事情が厳しい中、“2年連続のプラス改定”という事実のみをもって、3回連続のプラス改定は「けしからん」という論理がまかり通るからだ。そのような理屈で21年度の介護報酬改定では、引き下げが図られる可能性が高いということも、関係者は肝に銘じておかねばならない。
ところで10月の介護報酬改定の中で特に悩ましいのは、「介護職員等特定処遇改善加算」(以下、特定処遇改善加算)の問題である。この加算は経験年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円の処遇改善を行うことを算定根拠に、公費1000億円(全体の予算規模は2000億円)を投じるものだ。「8万円」という金額が大きく取り上げられ、介護現場で働く経験10年以上の介護福祉士は、自分の月額給与が8万円アップするのではないかと期待に胸を膨らませていた人が多い。しかし1月28日に召集された通常国会での施政方針演説で安倍晋三首相は、「リーダー級職員の方々に月額最大8万円の処遇改善を行う」という以前よりトーンダウンした説明をして、経験ある介護福祉士全員が8万円の給与改善をされることではないという含みを持たせていた。
案の定、2月13日の社会保障審議会・介護給付費分科会の諮問・答申内容を見ると、その期待は大きく裏切られたと言ってよいだろう。具体的に算定要件と配分方法について考えてみたい。
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次回配信は3月28日5:00の予定です
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