【社会医療法人財団菫仙会 本部情報部長 山野辺裕二】
手術などで皮膚の縫合を行う場合、皮下に埋める「真皮縫合」と皮膚表面の縫合の2層で行います。20歳代の頃、形成外科の学会で「新しい接着剤とテープを使えば、皮膚縫合は不要になる」という発表がありました。これについて、恩師の教授に「どうなんでしょうか」と尋ねると、「彼らもそのうち皮膚縫合に戻ってくると思うよ」と静かに言われました。その後も現在に至るまで、皮膚縫合が廃れることはありませんでした。
この話を思い出したのは、1960年代からコンピューターのソフトウエアを開発している会社の社長さんとお話をする機会があったからです。当然、かなりのご高齢です。話の中で印象的だったのは「仕事の本質はパンチカードの時代から今まで特別変わりはない」という内容でした。
次々と現れる新技術の行方を占うには、過去の歴史を踏まえることが大事だと思います。ITの分野でも、技術を開発する方向性が行ったり来たりを繰り返す「揺り戻し」があります。その一例が、計算処理の主体が中央にあるか、末端にあるかというものです。
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