【千葉大学医学部附属病院 副病院長・病院長企画室長・特任教授 井上貴裕】
外来におけるがん患者の受療率は増加しており、しばらくはこの傾向が続くものと予想される=グラフ1=。一方で、がん患者の入院の受療率は頭打ちなことから、入院医療の外来化が進んでいることが分かる=グラフ2=。特に外来化学療法加算を届け出る病院が増えており、DPC対象病院は約1650なので、かなりの程度まで普及してきた印象がある=グラフ3=。DPC/PDPSの普及がこの外来化に拍車を掛けたことは間違いない。「DPCだから化学療法は外来で実施しないと持ち出しになる」といったことがあちこちで言われ、信じられているからだ。
グラフ1 外来受療率(人口10万人対)の推移
厚生労働省 患者調査を基に作成
グラフ2 入院受療率(人口10万人対)の推移
厚生労働省 患者調査を基に作成
グラフ3 外来化学療法加算届け出病院数 クリックで拡大
中央社会保険医療協議会「主な施設基準の届出状況等」を基に作成(各年7月1日時点)
今まで入院で実施していたものを外来化すれば空床ができ、より重症な患者が入院できるようになる。外来で実施可能な医療ならば、外来で行う方が患者にとって経済的にも肉体的にも好都合だろうし、医療提供側もその方が楽だという側面があるだろう。入院させれば数々の書類作成が必要で、退院すればサマリーを作成しなければならない。しかも、入院すれば24時間体制での医療提供が必要であり、その人件費の負担を考えれば、外来の方が収益性が高いという見方もあるかもしれない。ただ、人件費は固定費的な性格があるので、患者がいてもいなくても、病院は一定額を負担する必要が出てくる。入院期間の短縮や高齢化の進展で、新入院患者の獲得が困難となり、病床稼働率が下落してしまった病院も少なくないだろう。だとすると、経営陣は「もっと入院させろ」という号令を掛けるかもしれないし、その気持ちも分からなくはない。
今回は、入院による化学療法は本当に赤字になるのか、つまり外来化学療法の収益性について、主要ながんに絞って検証し、今後の医療政策と病院経営の在り方を考えていく。
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