【千葉大学医学部附属病院 副病院長・病院長企画室長・特任教授 井上貴裕】
1. 進行中の議論
中央社会保険医療協議会の11月29日の総会では、安定冠動脈疾患に待機的に実施するPCIは、原則として術前の検査などで機能的虚血の存在を確認することを算定要件にすることが話し合われた。
ガイドラインでも、虚血がないことが証明されている患者に対し、PCIの適応はないとされているが、虚血検査の施行率は37.8%と報告され=図1=、血管造影で75%以上の狭窄があると判断されても、精査してみると46.4%の病変で虚血を認めなかったという=図2=。血管造影の結果だけではなく、機能的虚血を評価すると、薬物療法に変更される症例が56.7%あったという報告もある=図3=。これは裏を返せば、適切性基準から逸脱したPCIが実施されていることを意味する。2018年度診療報酬改定を機に、国にも不適切なPCIを減らす狙いがあるのだろう。高額な費用を要するPCIがかえって患者の予後を悪くしているなら、改めるのは当然だろう。
わが国の人口10万人当たりのPCI/CABG比率は、2000年の時点で米国の5.6倍と非常に高い値だったが、これは患者の状態だけでなく、日本の循環器内科医の技術が優れ、情熱にあふれていることに加え、国民皆保険や高額療養費などの制度があり、そして診療報酬を通じた政策の影響が考えられる。
図1 安定冠動脈疾患に対するPCI施行前の虚血検査の実施状況
中央社会保険医療協議会(2017年11月29日)資料より
図2 冠動脈狭窄病変における機能的虚血の存在
中央社会保険医療協議会(2017年11月29日)資料より
図3 機能的虚血の評価による治療方針の変更
中央社会保険医療協議会(2017年11月29日)資料より
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